BeSeTo演劇祭・韓国公演編

芝雀丈

春香役の中村芝雀さんと

10月16日
 
初めて行くアジアの国、韓国に出発です。
今日は朝7時半、箱崎集合。エアシティターミナルで出国手続きを済ませリムジンバスに乗り成田空港へ。ソウル金浦(キンポ)空港までは2時間半のフライトで、居眠りしたり軽い食事を食べたりしているうちにまもなく着陸という時間になりました。眼下に広がるソウルの街、中心部に同じ規格の高層ビルが固まって建っていて、まわりは住宅地。その区画や高低差がすごくはっきりしていて、何かどこかでこういう画像を見たことあるなと思ったら「シムシティ」という都市を造っていくゲームの画面に似ているのでした。
 12時半ころ金浦(キンポ)空港着陸。通路を通って歩いていくといきなりハングル文字の洪水。いままで海外に行って英語圏ではない国に行ってもアルファベットですから、何となく読めるし辞書を引けば単語の意味がわかりました。がこのハングル語はまず読めない、読めても単語の意味がわからない、目の前に書いてあることがすべて何が何だかさっぱりわからない、とこんなに不安な気持ちになったのは初めてです。
 入国審査を終えて荷物のターンテーブルに行くと衣装、床山、鳴物、長唄の大きなジュラルミンのトランクや行李がスーツケースに混じってぐるぐる廻っています。
「ん?」
 今まで行った長期の海外公演ですと荷物は船便で半年くらい前に出しますので劇場に行けばすべて到着していたのですが、今回は1週間で荷物も少ないので我々と一緒に飛行機で来ています。ということはこれは自分たちで降ろさなきゃいけないんだよね、ということに皆気付き、ここでソウルに着くなりいきなり力仕事。

荷物

全部で10個くらいの荷物ですが一つが30キロから50キロ、とにかく重いので3人がかりでないと持ち上がらないのです。そこにきて何故かこのターンテーブルの廻るのが妙に早くて(見ていても明らかに日本の空港のより早く廻っています)さっとやらないと荷物がどんどん向こうに行っちゃうのでこれまた大変。同時に自分たちのスーツケースも降ろさないといけないのでターンテーブルの一角は歌舞伎一行の荷降ろしで大騒ぎ、荷物を載せたカートは12,3台になりました。汗びっしょりかいてようやく荷物を空港ロビーに出しトラックに積み込むまでの間、ちょっと一休み。その間に私はドコモのワールドウォーカーで借りた韓国用の携帯電話のテスト。まずはこちらから家内の携帯にかけると実にクリアーにつながり、今度は日本からかけてもらうとこちらの着信音が鳴り通じていることを確認。まあ当たり前のことなのですが不思議な感じがしますね。ロビーに銀行があったので韓国の通貨「ウォン」の両替に行きました。1万円が10万2000ウォン、「0」が一つ増えただけなので換算は簡単ですが、財布の中が急にお札でがさがさ嵩張ってきました。
 そうこうしているうちに荷物の積み込みも終わり全員バスへ移動、ホテルに向かいます。ホテルは「北岳(ブカク)パークホテル」でソウル市内から北へ4キロ程行った北漢山(ブカンサン)国立公園の登り口にあります。部屋に入って一休みしたあと劇場行きのバスに乗り「国立劇場」に行きました。

春香伝垂幕

劇場正面の大きな垂幕

「国立劇場」はホテルから明洞(ミョンドン)などの繁華街を隔てて反対側の「南山(ナムサン)」にありまして行くのにバスで30分ほどかかります。大道具さんや床山さん、衣装さんは荷物をばらしたり仕事がありますが、私達は今日は劇場見学。劇場内をぶらぶらして、一足先に失礼して街に出かけました。
 地図を見ながら歩くこと1時間。ソウルの中心部、明洞(ミョンドン)に到着。ここは渋谷と新宿を混ぜたようなところでとにかく人が多いです。お腹も空いたので元祖石焼きビビンパップの「全州中央会館」に行きました。日本では「ビビンパ」といいますが正しくは「ビビンパップ」だそうです。お値段は6500ウォン(日本円で約650円)とびっくりするほど安いのですが、大変なボリューム。いやー、美味しかったです。他にも炭焼きカルビやチジミ、キムチを頂いて初日から韓国の味を堪能。口の中はカッカと燃えるような状態になりました。

明洞

明洞(ミョンドン)の街角。深夜までこの人出が続きます

10月17日
 
今日は10時半から舞台で稽古。なのでホテルを出るのが9時半と早いのです。昨日は乗り込みだけとはいえ、やはりここは海外。昨日はちょっと疲れてしまったので今朝起きるのが大変でした。
 国立劇場の楽屋は我が国の文化会館などの楽屋のようで違和感なく使えました。稽古は実際に舞台で立ち位置、照明などを確認しながら行い、お昼頃に終了。舞台の大きさは演舞場くらいと聞いていましたが実際には間口も大きいし、たっぱもあるし懐は深いし実際に道具を飾るとどんな感じになるのか楽しみです。稽古のあとKBS(韓国の国営放送)の取材。楽器のことなどでいろいろ質問を受けました。この模様は現地で19日に放送になるそうです。
 稽古が終わってお昼を食べに明洞(ミョンドン)に出掛けました。碁盤の目の様な路地に沢山のお店がひしめき合っていて地元の人や観光客ですごい人出、とにかくエネルギッシュでアジアだなぁという感じ。セブンイレブンやファミリーマートなどコンビニも沢山あってちょっとしたものや飲み物もすぐ買えるし日本語の通じる人も多いし、町並みを見ているとほとんど日本と変わりません(もっとも顔つきが一緒ですしね)。地図を見ながら一通り路地を歩いて、お土産を買ったりして3時頃一旦ホテルに戻りました。
 今日は夜、家内とその友人が来るので夜9時過ぎに家内が泊まる明洞のメトロホテルで待ちあわせ。8時頃再び明洞に来ました。昼間から賑やかな町ですが夜になるとそのパワーは数段上がりすごい喧騒、人出も初詣でのようで歩くのが大変なくらい。
 
 明洞から通り一つ隔てた所に南大門(ナンデムン)市場があります。ガイドブックによるとこの市場は夜が賑やかで、朝方までお店が開いているとのことなので行ってみました。明洞は最新の流行のファッション街ですが南大門市場はガチャガチャのアメ横みたいなところ。お店の人はこちらが日本人とわかると皆日本語で話かけてきます。バラックみたいな店が並んでいる路地の真ん中ではおばちゃんが大きなリヤカーで漬物の店を広げていたり海産物を売っていたり、初めはこのエリアに入るのにちょっとビビリます。しかし歩き出すととにかくいろんなお店があり、面白くていくら時間があっても足りない感じ。一見危なそうな場所ですが治安は良いのでいくら遅くまで歩いていても大丈夫です。でもあまり気を緩めるのもなんなので、持ち物などには気をつけて歩いていました。

南大門

深夜の南大門(ナンデムン)市場


 1時間ほど歩いてそろそろ家内一行がホテルに到着する頃になったので明洞に戻りました。10時半頃、御一行様無事到着。荷物を置いてから民俗酒場に出かけマッコリや韓国料理おつまみで盛り上がりました。日付けが変わっても表はまだ大騒ぎの真っ最中で、韓国の若者はいつになったら寝るのだろう。

10月18日
 昨日の稽古の帰りがけに「韓国の楽団の指揮者さん(この公演の音楽総監督らしい?)が、春香伝の序曲とフィナーレの曲を作曲して、それを三ヶ国の楽団で合奏することになりました」と会社の人から言われました。オーケストラの指揮者さんから来る譜面じゃもちろん五線譜だろうし物によっては厄介なことになるなぁと思いましたが、とりあえず音を聞いてみないとわからないので昨晩テープを頂くはずになっていたのに、そのテープが届きませんでした。
 何もわからない状態で今日は朝10時からその打ちあわせがありまして鳴物さんと劇場に行きました。打ち合わせの部屋には「国立管弦楽団楽長室」といった札がかかっていて何だか、いやーな圧迫感。すぐその指揮者さん(グッチ祐三さんに似ていて私達はずっとグッチさんと呼んでいました)にお会いして話しあいになりました。
 まず昨日もらうはずになっていたテープと譜面のことで「届けた」「もらっていない」と少しもめまして、譜面はその場でもらいましたが予想にたがわず五線譜、「三味線」「打楽器」「笛」それぞれちゃんとパート譜が出来上がっているのです。これはもう絶対参加しなくてはいけないような雰囲気で、その指揮者さんは「今すぐ楽器を持ってこい」みたいなことを言っていますが、まずその曲が三味線で弾けるのかどうかもわからないし、それを三味線の譜に直す時間が必要ですから「今すぐは無理」と伝えてもらうと「とりあえず今から練習があるので聞いてくれ」というようなことを言われてレッスン室に行きました。入ると韓国、中国の楽団がスタンバイしてチューニングの最中。どちらの楽団も伝統的な古典楽器主体のオーケストラで10人以上の編成。それに対して歌舞伎チームはたったの5人でちょっと寂しい感じ。早速そこで練習が始まり譜面とにらめっこになりました。
 私も以前楽典を勉強していた頃は五線譜で弾いてみたり譜を書いてみたりしたことはありますが、普段仕事で五線譜はまったく使いませんから全然ピンと来なくて、初めのうちは小節を追うのがやっと。でも2,3回聞くうちに曲の進行がわかってきましたので、一旦失礼して音を採る作業に入りました。三味線というのはキーが決まった楽器ではありませんからどんな調子でも作ることが出来ますが、まず弾きやすい指使いを考えて調子、開放弦の音を決めてそこから音を探りながら譜面を書いていくと「四本の二上がり」で簡単に弾けることが判明、2時間くらいで何とか譜面の書き換えの出来あがり。
 今日は夜、歌舞伎チームの舞台稽古で道具の建て込みやらでかかるのは8時過ぎということで一旦ホテルに帰ることにしました。夕方5時に劇場行きのバスが出るのでフロントに降りましたが、今日は昼間空いていますので遊びに行ってそのまま劇場に行く人が人が多いのか、集まったのは信二郎さんと地方5人だけ。その6人でバスを待っていましたが、どうも連絡ミスかそのバスが30分経ってもいっこうに来ません。劇場と連絡を取り合ってバスが来たのは結局集合時間の1時間10分後でした。
 8時頃から舞台稽古が始まり各場二度ずつ返して9時半に終了。大道具さんは東京からは2人しか来ていないので現地のスタッフさんにも手伝ってもらうのですが通訳さんを介しての作業は大変です。同じ大道具でも作法が違うのは面白いですね。
 
 今晩は今回の韓国公演の情報をいろいろ送って下さったNANAさんと合流。NANAさんはインターネット歌舞伎友達でうちにお稽古にも来ていましたが、今年の3月頃からお仕事の関係で韓国在住。ハングル語のわかる強い味方の登場です。

10月19日
 
今日はまた10時から合奏の練習。こっちに来てから連日早いのでやや疲れ気味。
レッスン室に入るとまた何やら譜面を配っています。何だろうと思ったら今度はフィナーレの曲なのです。これも聞いてみなくてはさっぱりわからないのでテープを録って聞いてみたのですが、音や指使いがこっちはかなり厄介な感じ。序曲の練習が終わったあとまた音を採る作業に取り掛かりましたが、他の国の楽団の方はは全体の楽譜を見ているのに私達はパート譜だけ。この辺で全体の様子がわかるまでに苦労しましてずいぶん時間がかかりました。

練習風景

「春香伝・序曲」三ヶ国合同の練習風景

 とにかく今やらないと3時から全体の舞台稽古に間に合わないので私もかなり焦りました。
 
 今日は通しの舞台稽古ということでマスコミの取材がたくさん入っていまして俳優さんは次から次へと大忙し。歌舞伎もテレビ放送用の取材がありまして「夢の場」の踊りの部分だけ1時から収録。その後もフィナーレの曲の音採りでずっと楽屋に居ッきり。2時間くらいテープを聞いてようやく曲の構成も頭に入り旋律もだいたい覚えて譜面も書け、やっと一息。本業の芝居よりこのおまけの方ですっかりエネルギーを使い果たした感じです。
 舞台稽古では別にアクシデントはありませんでしたが、道具の転換が大変でずいぶん時間がかかってしまいました。全体の上演時間は決まれば3時間くらいの予定ですが今晩の初日公演はかなり遅れそうな予想。
 舞台稽古が終わって6時半。すっかりお腹が空いてしまい、ロビーの売店に行くとサンドイッチやハンバーガー、肉まんといろいろありましたので皆でそれを買い込み軽く夕食。こちらに来て久しぶりの刺激のない食べ物だったので何か新鮮でした。楽屋にコーヒーの自動販売機らしきものがあるのですが、これの表示がまたさっぱり読めないので皆適当にボタンを押しているうちに、右の端がコーヒー、真ん中がカフェオレとか判明してきました。これがべらぼうに安くて一杯200ウォン(約20円)。大騒ぎして買ったコーヒーを楽屋の休憩所で飲んでいると韓国の唱劇の女の子が食事をしていて小龍包を御馳走になりました。

唱劇の皆さん
小龍包を頂いた
韓国「唱劇」の皆さんと
売店
劇場の売店で買った食料
禁煙の看板
楽屋の「禁煙」の看板

 本番が明く前に結構疲れてしまい皆、妙にテンションが高くなった頃ようやく「春香伝」の初日が明きました。歌舞伎の部分は何もトラブルもなく引き抜きも上手くいき無事終了。憂鬱の種の「序曲とフィナーレ」もどうにか弾けたので良かったです。昼間の予想通りかなり遅れて終演は11時近くなりました。

終演後舞台で出演者、関係者、マスコミ入り乱れての写真撮影大会。

三人の春香
中国・韓国・日本の
「春香」
みんなきれいですね。
春香・李夢龍
三ヶ国の「春香・李夢龍」が揃って記念撮影

明日は朝10時半から劇場で歌舞伎のワークショップ、また朝が早い。

10月20日
 
昨日無事初日が明いて、何だかホッとして気が抜けたような感じ。しかし今日もまた早くからお仕事で10時から劇場で歌舞伎のワークショップがあります。
 このワークショップでは楽器の解説、歌舞伎の音、演技をお見せしますので長唄、鳴物、竹本、そして芝雀さん、信二郎さんらで9時にホテル出発。どうもこっちに来てから日に日にホテルを出るのが早くなっていくようで、行きのバスで私は寝っぱなし。ソウル市内の慢性的な交通渋滞で劇場行きのバスは最低30分は乗りますので居眠りするにはちょうどいい時間です。

 ワークショップは劇場内の練習室で行われました。参加した方はほとんど大学生で次から次に部屋に運ばれてくる楽器に興味津々。まず松竹の岡崎さんが歌舞伎の歴史など概略的なことを解説してから黒御簾音楽の実演。どれもかなり大きな音を出しますので、皆耳を押さえたりしてびっくりしていました。音楽が終わったあとは演技の実演。立役、女形の演技、「ツケ」の説明、見得、音を入れての立廻り、飛び六法など芝雀さん、信二郎さん大熱演。信二郎さんのお弟子さんの信之さんは堅い床の練習室でトンボまで切ってしまいました。参加者の皆さんから大きな拍手を頂いて1時間半のワークショップは終わり、質問コーナーでも沢山の質問が出て終わったのはお昼を過ぎていました。

ワークショップ1
ワークショップ会場

朝早くて暖房が効かず
最後まで寒かった

ワークショップ2
参加者の皆さん
ワークショップ3
黒御簾音楽の実演

竹本さんと一緒に
「上下」の演奏

 本番は夜7時半からで時間がありますので仁寺洞(インサドン)で家内一行と合流。こういう時に携帯電話は本当に便利です。仁寺洞は陶磁器や古美術品の町で仁寺洞キルの路地の両側には陶磁器、書道具、螺鈿工芸、李朝の家具、古美術、古典芸能の仮面劇(タルチュウム)の仮面、お土産などの店がずらりと並び、とても落ち着いた雰囲気の町並みです。一つ一つ丹念に見ていくと、いくら時間があっても足りないような面白い所。ざっと見て町中に戻る途中飲食店ばかりごちゃごちゃ集まっているアジアっぽい路地に参鶏湯(サンゲタン)のお店があってそこに入りました。日本で食べると2000円くらいしますがこちらではどこのお店でも7500ウォン(約750円)から8500ウォンと安いのでびっくりします。参鶏湯一つに鶏の丸焼き一つ頼んで3人で食べましたがもう充分!というボリュームで全部で15000ウォン、韓国は食事が安くて美味しくて良いところです。

マック
韓国ではほとんどシェアのないというマック専門店発見。「G4キューブ」がおすすめ!のようなのですが文字が変わるとマックの広告のイメージもずいぶん変わります。
しかし読めない。
ドトール

ソウルの
「ドトールコーヒー」

「Aサンド」「スパイシードッグ」などメニューは日本と一緒でした。

 ミョンドンに戻るのに一駅だけ地下鉄に乗りました。初めて乗りましたがソウルの地下鉄は600ウォン(約60円、安い!)であちこち行けますのでお得。路線図の色使いが営団線に似ていて銀座線、丸ノ内線、半蔵門線など一通り揃っていますが線の曲がり具合が全然違うので何だか変で面白いです。電車は結構混んでいて車内の景色は日本とほとんど一緒。ソウルの繁華街には地下街があちこちにあります。地下歩道かと思って階段を下りると遥か彼方までお店が続いていたり、地下鉄の駅と駅の間にも小さな地下街がありますが、一ヶ所中古カメラ店ばかり並んでいる所があって私は「うぉー!」とウインドウに張り付いてしまったことがありました。地下街巡りも面白そうです。
 ミョンドンのハーゲンダッツでアイスクリームを食べて一休み。
私はその足で劇場に向かいました。タクシーの窓から町並みを眺めていて面白いのは、ソウルでは同じ種類の店や問屋が一ヶ所に固まっていることです。東京でも秋葉原や合羽橋、神保町など専門店が集まった町がありますが、ソウルではそれが半端ではありません。
今乗っているタクシーで走っている間だけでも、オートバイ屋街、硝子屋街、厨房器具街、照明器具街、家具屋街、材木屋街、可愛い子犬だらけのペット屋街(ここはゆっくり見たかった)と目まぐるしく町並みが変わります。こんなに店が集まっていてお互いに商売に影響は出ないのかなぁ。
 本日の舞台も滞りなく終わり、楽屋を出てから家内とNANAさんと南大門(ナンデムン)市場の中の屋台料理の店に行きました。店頭で豚のあばらが大鍋でグツグツ煮えていて食欲をそそる良い香り。野趣あふれる豚のスープご飯(ご飯の上に豚の耳、バラ肉、血の腸詰めのスライス、レバーなどがのっていてそこにスープをかけ、豆板醤をのっけて食べます)や豚バラの焼き肉(ごま油に塩、味噌、ニンニク、青唐辛子を肉に付けて葉っぱに巻いて食べます)など実に美味しかったです。こっちに来てから食べ物が合っているのか、すこぶる体調良し。

スープご飯 薬味
豚スープご飯
豚バラ、キムチ、辛子ネギ美味しい薬味いろいろ

 ソウルではタクシー料金が安くどこに行くにも便利なので、ほとんどタクシーで移動していました。
 ソウルのタクシーには2種類あります。
黒い車体にゴールドのラインが入っていて運転手さんも丁寧。きちんと制服を着ている初乗り3000ウォン(300円)の旅行者には安心の「模範タクシー」と白い車体で初乗り1300ウォン、相乗りが基本の「中型タクシー」があります。昼間はどこでも「模範タクシー」がタクシー乗り場に止まっていて全然苦労しなかったのですが、これが深夜になると実に厄介。まず安心の「模範タクシー」は全然走っていなくて行き先とコースが同じような人が相乗りで利用する「中型タクシー」ばかり。繁華街ではタクシーを捕まえる人が道路にいっぱい立っていて方向が合うと乗っていくのですが、これは言葉が通じないと全く話になりません。
 18日の夜もタクシーが捕まらなくて苦労しまして、韓国語の話せるNANAさんが止めてくれてようやく乗ることが出来ました。
前に一人若い女性がいてその人を目的地に降ろして私の番になるのですが、一人降ろすとメーターを「0」にしてまたメーターを倒すという料金形式で、日本の白タクの様ではないことはわかりました。乗った後にわかったのですがこの運転手さんが日本語の話せる人だったので、おしゃべりしながらホテルに戻ってきましたが、結構スリルのある「深夜乗合いタクシー」初体験でした。

 今日もずいぶん遅くなってしまって、18日のことがありましたので大きなホテルに行ってタクシーを捕まえることにしてロッテホテルに行きました。ロビーに入るとミョンドンで食事をしてきたという仲間5人に遭遇。みんなもタクシーが捕まらなくてロッテホテルに来たところに私が偶然出ッくわしたのです。ドアマンと話しても「今日は金曜の夜だから難しいだろう」という返事で、こりゃ通りで探すかということになり外に出ると、ホテルのタクシー乗り場に2台の中型タクシーが止まっています。
 日本語の話せる運ちゃんで、行き先を告げると「乗れ」と言うので乗ろうとするとドアマンが走ってきて「この車は法外な料金を請求する良くないタクシーだから乗るな」と言うのです。一流ホテルなのでその辺はかなり徹底しているようで、「ここから出ていけ」「何でだ」と運ちゃんとドアマンでちょっと一悶着あってタクシーはホテルから出ていきました。仕方がないので通りに出るとさっきのタクシーが止まっていて「20000ウォンで行くから乗っていけ」と言うのです。正規の料金では7000ウォンくらいで行きますから約3倍の料金を吹っかけているのですが、夜も遅くて皆くたびれているし、吹っかけているといっても日本円で約2000円のことですから「上等上等、乗っていこう」ということになりました。
 走り出すとまあよくしゃべる運ちゃんで、話がだんだん風俗関係の話になってきました。つまりどこかそういうところに連れていくと運ちゃんもいくらかもらえるのでしょうね。いい加減にうるさくなってきたのでもう相手にせずホテルに着いたところで仲間の一人が「さっき20000ウォンて言ったけど、3人で割りやすいように18000ウォンにならない」と白タクを値切りにかかりました。運ちゃんもメーターを倒していませんしこれには文句も言えませんので「まいったなぁ」と言う顔をしていましたが18000ウォンで交渉成立。ずいぶん遅くなりましたがどうにか無事にホテルに御帰還。しかし疲れた。

10月21日
 
こちらに来てからずっと7時起きの9時ホテル出発というような日程が続いていましたが、昨日のワークショップで朝の用事も終わり、今朝は久しぶりにゆっくりしていました。でも今日は唯一の2回公演の日で2時には楽屋入りしなくてはならないので思ったより時間がありません。
 昼間は「ロッテデパート」に行きました。「ロッテデパート」は日本だと「日本橋三越」の様な位置づけになるのでしょうか。地下には食料品売り場、フロアーは広くて明るくてブランドショップなどもいっぱいあってとても立派。雰囲気はまるっきり日本のデパートです。その10階に免税店がありまして行ってみるとお客さんのほとんどが日本人。店員の女性もみんな日本語が上手でやや売り込みが強引、ちょっと立ち止まると「このオーストリッチの財布、奥様にいかがですか」「このキムチは奥様が喜ばれます」と何かと「奥様」にかこつけて売り込んできます。面白いのでしばらくあっちこっち素見したあと食事をして劇場に向かいました。
 今回の「春香伝」、歌舞伎担当の第三幕は時間にして約50分、そのうち私達長唄の実働時間は20分くらいで、東京で稽古が終わった段階では「そんなに大変じゃなくて良かったね」といたって呑気にソウルに来ました。ところがこっちに来てから例の五線譜翻訳に苦労した「序曲とフィナーレ」が付いたおかげで三味線弾きは全体の芝居の始まりから終わりまで約3時間拘束されることになりまして今日の2回公演も一部と二部の間がほとんどありません。外に行くにもこの劇場は町中から離れていますので、今日もまたすっかりおなじみとなったロビー売店のハンバーガーに肉まんで遅い昼ご飯を済ませ、居眠りしたりゲームボーイをやったりカメラを磨いたり(これは私)人それぞれいろんな事をやっているところに今回の公演でお世話になっている通訳の女性が衣装さんと一緒に入ってきて、何をするのかなと思ったら衣装の着付け初体験。
 洋服の上に襦袢、お腰を付けて夢の場の芝雀さんの衣装を着せてもらう事になりました。着物の重さや帯を締める力の強さにびっくりしつつも、めったにと言うよりは二度と経験出来ないことですから御本人は感心しっぱなしの嬉しくてニコニコ。そこに仲間の通訳さんが入ってきて「あ!○○さん、綺麗!いいな、いいな」衣装さん「じゃ△△さんにも着せてあげるから明日おいで」
 着付けが終わって鏡を眺めているところに顔をして浴衣の芝雀さんが入ってきて「あ、僕の衣装着てる!」そこに信二郎さんが入ってきて「あれっ?兄さんもう着てるの。ん?兄さんここにいるじゃない」一同大爆笑!こういうのも海外公演ならではですね。

着付け1 着付け2
何故か帽子をかぶったまま
御本人大喜びです
着付け3
芝雀さん、信二郎さん、みんなで記念撮影

 どうも今日は昼間から風邪っぽくて疲れていたので、第二部は息切れ状態のうちに終わり終演後はまっすぐホテルに帰りました。
ソウルに来て2日目くらいから帰りのバスでミョンドン途中下車の希望者が多く連日ほとんど降りていたのが今日は2人くらいしか降りません。どうやら昨日の私と同じ様な時間にみんなタクシーでかなり苦労したようで、深夜まで騒いでいるのにすっかり懲りてしまったようです。
ホテルに戻ってから通り隔てて向い側にある「ホテルオリンピア」の深夜2時まで開いているレストランで食事をしました。
いろいろとって皆でつついていたのですが、これがどれも美味しくて、もっと早くここに来ればよかったと思いました。何となく皆で話が盛り上がりのんびりしてしまったのでホテルへ帰ったのはずいぶん遅くなりまして寝たのは3時過ぎ。
明日はいよいよ千穐楽、あともう1日頑張れ頑張れ。

越劇

中国の「越劇」の皆さんと

10月22日
 
朝7時半ころ家内からの電話で起こされました。
今日は家内の友人が一足先に帰ってしまうので今晩一泊、家内とミョンドンのホテルに泊まる予定になっていました。早い時間にそのホテルに行って荷物を置いて午前中からどこかぶらぶらしようということになっていたのですが、なにしろ4時間くらいしか寝ていないため徹夜明けみたいな状態。
 のろのろ支度をしてホテルを出ました。8時を過ぎて道路はもう渋滞が始まっていましてタクシーの窓からの風景も日本みたい。一瞬外国にいるのか日本なのかわからなくなります。
 今晩泊まるミョンドンのメトロホテルに荷物を置いてぶらぶら出かけました。夜は賑やかなミョンドンですが、さすがに朝の8時半は静かでがらーんとしています。どこかで朝ご飯を食べようということになりまして、私はマクドナルドとかドトールに行くのかなと思ったら家内は「ビビンパの美味しいところがあるからそこに行こう」と言うのですね。起き抜けにビビンパ!第一こんな早くからそういうお店が開いているのかなと思ったら何と朝9時開店だそうで、その「古宮」というお店に行きました。

石焼きビビンパ
「石焼ビビンパ」

具は自分でのせます

古宮ビビンパ
これが看板料理

「古宮ビビンパ」

 ここは大変歴史のある韓国料理のお店で、ビビンパが名物。
石焼きビビンパと普通のビビンパがありまして、普通のビビンパがお店の名前を付けて「古宮ビビンパ」という看板料理となっています。ほんのり暖かいご飯に具が乗っていてそこに胡麻油がかかっているのがミソで、実に食欲の湧いてくるいい香り。これは美味しかったですね。
 「起き抜けからビビンパなんてねぇ・・あたしゃちょいとつまむくらいでいいです」なーんて言っていたのが目の前に出てくるといい香り、豆板醤を放り込んでハァハァいいながらぺろっと食べてしまいました。石焼きビビンパの熱さと辛さで頭はすっきりしてくるし体も暖まってきて俄然調子が良くなってきました。
 朝から美味しいものを頂いて気持ち良くお店を出るとまだ10時過ぎ。もう少しお土産を買おうかというのでまた仁寺洞(インサドン)に行きました。日曜日だったので人出も多く賑やか。途中韓国茶のお店があったので一休み。生姜の冷たいお茶を頂きましたが美味しかったです。中国茶の次は韓国茶かな。

仁寺洞(インサドン)の町並み
チャンスン
変な顔の狛犬
韓国茶を頂いた伝統茶院
静かで落ち着いた喫茶店です
生姜のお茶
冷たくて甘くて美味しい

 千穐楽なので少し早めに楽屋入り。
今日は撤収ですからボテに詰める荷物を整理して着替えてから芝雀さん、信二郎さんの楽屋に千穐楽のご挨拶。千穐楽とはいっても芝居は別に変わらずに進んで「春香伝」公演全日程終了。
 エンディングを弾いているときに舞台ではカーテンコールで各国の俳優さんが登場するのですが、いつもは最後までお化粧をして衣装を着ていた越劇の女優陣が後片づけの都合か今日はスッピン、チャイナドレスで登場。越劇の女優さん達のお化粧はかなり濃いので顔を作っているときは年齢もよくわからずどの人も同じ顔に見えていたのですが、素顔になるとこれが可愛いいんです。
「あら!」一瞬目を奪われて弾くパートを忘れそうになりました。

上手袖の
エンディング演奏風景
信二郎さんと家内と
記念撮影

 苦労した、オーバーチュアーとエンディングも今日で最後。幕が下りたあと韓国と中国の楽団の皆さんと拍手。
「ありがとうございましたぁ」「お疲れさまでした」という意味の中国語、韓国語、日本語(はそのままだ)が飛び交い、指揮者の「グッチさん」から韓国の伝統楽器のオーケストラのCDを頂きました。
終演後全員集合の写真撮影があるので舞台に集合。三カ国の関係者が全員揃うとすごい人数で収まりきらないような感じでしたが、あっちを寄せこっちを寄せして大集合写真の撮影が終わりました。その後もしばらくの間、役者さんと一緒に撮ったり、チャイナドレス軍団と写真を撮ったり(これは私だ)舞台の上は写真撮影で大盛り上がり、皆さん名残惜しい様な感じでした。

脚本・演出の石澤秀二先生と
韓国の春香さん(一番右)と中国の春香さん(右から三番目)
信二郎さん、芝雀さんを囲んで 

 楽屋に戻って三味線をばらしていたら、どうやら無事に終わったので急に気が抜けてしまいました。このあと打ち上げの式典がありますので急いで撤収、荷造りをしてロビーへ。今日芝居を観ていた家内も一緒に行ってしばらく式典を見ていたのですが、ちょっと疲れてしまったので途中で一足先に失礼。
 ホテルに荷物を置いて着替えてから「さて今日は何を食べようか」ということになりガイドブックを広げたのですが、一昨日行ったナンデムンの食堂が気になってまた行くことにしました。私は2回目ですが、何と家内は4日連続。お店のおばさんともすっかり顔なじみになり韓国最後の夜、楽しい食事となりました

胡麻油&塩をつけて葉っぱに巻いて食べる豚バラの焼肉に、牛の骨付き肉とじゃがいもの煮込みスープご飯。これに豆板醤をスプーン1杯放り込んで少しづつ溶かしながら辛さを調節して食べます。どんぶりは熱いしスープは辛いしゆっくり食べないと大変なことに。ちょっとでも唐辛子のかけらが咽喉に張り付くとしばらくの間、ケンケンの声の様になってしまいます。
すっかり顔見知りになって
しまった「ムジン屋」のおばさんと記念撮影。
この前に並んで湯気をあげているのが皆どれも美味しいのです。

明日は帰国。朝早く家内をロッテホテルのリムジン乗り場に送って、私もホテルに戻らなくてはなりませんのでまた早起きだ。

これにて「春香伝」韓国公演日記おしまい