3月7日
 
どうもすっかり御無沙汰してしまいましてすみません。
4日に初日の明いた国立の芝居「新世紀累化粧鏡」がようやく落ち着いてきまして、久しぶりにパソコンを開く時間が出来ました。
大阪から帰ってきたころから書いていきます。

 2月25日は松竹座の千穐楽。相変わらず風邪っぽく朝からすごく疲れちゃって、夕方6時に一足先に楽屋を失礼して新幹線に乗ったら気が抜けてガクッときてしまいました。これで休みがあればいいのですが26日から歌舞伎座の稽古が始まりましてまた休みなし、今年に入ってから1日も休みが無いよー。
 私は今月、歌舞伎座の「君が代松竹梅」を弾いて国立劇場に行きます。歌舞伎座の「松竹梅」は原曲がわからなくなるくらいのドカ抜きなので元の曲の半分、13分くらいで終わっちゃいます。26、27日は歌舞伎座の「松竹梅」の稽古だけで時間も夕方からだったので、空いている時間は帰ってきた大量の宅急便のバラシ。旅の荷物の片づけって「うわっ」と一気にやっつけちゃわないとだめなんですね。
 28日からは国立劇場の「新世紀累化粧鏡」の稽古が始まりましたが、こっちは長い芝居なので稽古も大変。この日は午後に「松竹梅」の舞台稽古がありましたので途中で国立の稽古を抜けて歌舞伎座へ。思いの外歌舞伎座の稽古がトントン進んでいて歌舞伎座に着いたら前の「藤娘」の稽古が始まっていましてロスタイムほとんどなし。歌舞伎座の舞台稽古を終えて再び国立劇場に戻ると、こちらはまだたっぷりと残っていて結局終わったのは8時頃でした。疲れているので長時間の稽古に身体がついていきません。

 月が変わって3月1日。国立劇場では「新世紀累化粧鏡」の総ざらい。芝居も音楽もだいぶ決まってきましたがまだまだ時間がかかりそう。この芝居、効果を超魔術の「Mr.マリック」さんが担当していましてこの日稽古場に登場。大道具、小道具とも仕掛けがたくさんあるのでいろいろアドバイスをしていました。今日は稽古場で稽古をやりながら大劇場では道具を飾って道具調べを合間合間にしましたので予想以上に時間がかかり終わったのはまた8時過ぎ。疲れたぁ。

 2日は歌舞伎座初日。「松竹梅」が終わって国立劇場に向かい、お昼からいよいよ1回目の舞台稽古。この芝居は序幕と大詰が道具が大変で、まあ今日はかなり時間がかかるだろうな、とは思いましたがこんなに遅くなるとは思いませんでした。
 まず序幕、決まれば1時間20分くらいの幕ですが終わったのは7時過ぎ、一幕三場に何と7時間かかりました。
「この調子で最後まで進んだら終わるのは夜中の2時3時かぁ、ひぇー!!」なんていっていたらここで楽屋中にアナウンス。
「二幕目は明日にまわして今日はこのあと三幕目に行きます」とのこと。やっぱり滝の場は今日時間をかけて徹底的にやっとかないと心配ですからね。
今日の舞台稽古はこれで今日中には終わるかなと少し皆元気になりましたが、この三幕目の舞台稽古の柝がいっこうに入りません。
 楽屋で台本を直したり合方を復習ったりするうちに9時をまわり、何だか疲れ切ったころやっと廻りになりました。これですっと進むかといえばこれがまた一筋縄では行かないのですね。この場は立ち廻りがたくさんありますし、「ウインクする大きな鯉」とか道具の仕掛けも複雑なのでので役者さん達はまず実際に道具に立ってみて動きの確認。黒御簾もきっかけがたくさんありますのでその動きや型を一通り確認して、三幕目の舞台稽古の始まったのは11時過ぎでした。結局舞台稽古の取れたのは夜中の0時15分。タクシー券が出ましたが、いやーしかし参った!くたびれた。

 3日は幕間を本番通りにとっての通しの舞台稽古。昨日預かりになった二幕目がどんな具合になるのかと思いましたがだいたい時間通りに進み5時半に舞台稽古終了。これといったアクシデントもなく終わりましたが、明日4日は初日。何だか心配です。

 4日、国立劇場初日。舞台に携わるどの職分の人も大変だったと思いますが黒御簾内も戦争状態。三味線、唄、お囃子さん共みんな終わったときにはぐったりとしていました。とにかく大掛かりなお芝居ですが何事もなく無事に初日が明いて良かったです。それからも細かい変更が連日ありましたが、ようやく全体がまとまってきました。

 大阪から帰ってきてからやっと一息つけた感じですが、15日には国立劇場の養成課の終了発表会、20日くらいから染五郎さんの会の稽古が始まりますのであまりのんびりしていられません。

3月11日
 
先週始めはポカポカと暖かくなって「おっ、春めいてきやしたね」なーんて言っていたらまた雪がちらついて冬に逆行、なかなか暖かくなりません。今日も何だか寒かったですね。

 昨日今日と国立の芝居の全通しを2日続けてやったら結構ヘロヘロにくたびれました。序幕1時間15分(幕間30分)二幕目1時間30分(幕間15分)三幕目45分、といった具合でそれぞれの幕が始まるとほとんどぶっ通しで座りっぱなしの弾きっぱなし。足もかなり痛いですが、お尻も合引が食い込んで尾てい骨が痛くなりました。

 最後の「鯉つかみの場」では橋之助さん、東蔵さん、獅童さん、立廻りで皆楽しそうに水をバシャバシャやっていますので最前列にはかなり水が飛んでいます。お客さんも「キャーキャー!」いいながらビニールシートで水をよけていますがこちらもとても楽しそうです。

その「鯉つかみの場」での今日のハプニング

「鯉つかみの場」の立廻りの終盤、名画から抜け出た鯉と与右衛門(橋之助さん)が立ち廻りをやっているところに花道から狩野元信(福助さん)が出てきて、絵に鯉を戻すには鯉の目を刺しなさい、と言います。この場で与右衛門は大きな鎌を持って立廻りをやっていましてその鯉の目を突くのもこの大きな鎌でやるのですが、今日その鎌が水槽の中でどこにあるかわからなくなってしまったようです。上からは滝の水がかなりの水量で落ちてきますしドライアイスの煙で水槽の中はかなり見にくいようですが、福助さんが出てくる寸前、橋之助さんは「あれっ?」と言う感じでそれとなく水槽の中を探していました。そうしているうちに福助さんが花道に登場「目を刺せ、目を刺せ」という科白になりますが橋之助さんは鎌が見つからない。

黒御簾でも「鎌が無くなっちゃった」「どうするんだろう?」

橋之助さんも見つからず「どうしよう」と困ったような苦笑い。舞台に来た福助さん「???」すかさず状況を察して自分の差している刀を抜いて橋之助さんに投げました。橋之助さんはその刀で鯉の目を突いて無事に治まったという一番大詰めでのハプニング。
終わったあと楽屋では大笑いでした。

15日の国立劇場養成課の発表会の詳細をアップしました。第一期長唄研修生はこれが修了演奏です。皆さんどうぞお出でください。

今月の23日で「BEN'S CORNER」 開設2周年を迎えますが、つい先日30000カウント達成!これからもよろしくお願いします。50000カウントしたらミニパーティーでもやりましょうか。

3月23日
 
今日、「BEN'S CORNER」開店2周年
今朝私が出かけたあと、1通のお祝い電報が届きました。家内は一体何のお祝いだろう?、今日はなんかあったっけ?と開けてみると友人Hさんより「祝、開店2周年」のお祝い電報!本当にありがとうございました。
ディスプレイ上より御礼申し上げます

 昨日国立劇場がやっと千穐楽になりました。今月は歌舞伎座の序幕が終わってから国立へ、というのをずっとやってきましたが日が重なるに連れてだんだんくたびれてくるものですね。それに加えて先週あたりから芝居が終わったあとにいろいろ用事がありましてこんな忙しくなるとは思いませんでした。パソコンは毎日開いていたのですが何だか文章も進まず、日記も間が空いちゃったし掲示板にもたくさん書き込みを頂いたのにすっかり滞っちゃって、これから少しずつお返事を書いていきます。

今までの出来事いろいろ

 15日は養成課の研修発表会。今回は第一期長唄研修生の修了発表ということもあって私たち講師もいつもの発表会とは一味違う緊張感。小劇場の正面にずらりと並ぶ演奏会というのは何回やっても慣れるということはなく今回もすごく緊張しました。
2年間の研修ですが2人の研修生ともよく唄いよく弾けるようになりました。今年から実際に現場に入るわけですがこれからが本当のスタート、頑張って下さい。

 昨年うちの社中の三味線の大先輩、人間国宝の松島寿三郎師が浅草公会堂正面の「スターの広場」の手形の仲間入りをされまして、17日にその「スターの広場」手形顕彰式と浅草芸能大賞授賞式がありました。
 公会堂に着くと舞台では授賞記念公演が始まったところで、島田正吾さんのお話の最中。楽屋に伺うと寿三郎師、里長師、五七郎さん、文五郎さん皆支度が済んで本番前のお稽古。
演奏するのは大薩摩とめりやす「由縁の月」。大薩摩はお芝居でやる時のように合引に足をかけての演奏。「由縁の月」は「廓文章」で「胸は二上がり三下がり」のあとの独吟の曲です。

 楽屋でお稽古が終わり皆でおしゃべりしていると「やだねったら、やだね〜♪」と舞台ですごいボリュームで歌が始まりました!。
モニターを見ると、今回浅草芸能大賞で新人賞受賞の氷川きよしさんのステージ。「うおー!本物だ、本物だ!」みんなで舞台の袖に大急ぎ。客席ではペンライトが揺れちゃっているし手拍子が始まるし「このあとでやるのはやだねー」と寿三郎師も里長師も苦笑い。
氷川きよしさんのステージが終わったあとはいよいよ寿三郎師の舞台。私は今日はカメラマンもやっていましたので客席や舞台の袖から写真を撮りながら演奏を伺っていました。寿三郎お師匠さんにはこれからもお元気で御活躍していただきたいと思います。

 20日、21日は夜9時から染五郎さんの会の「封印切」のお稽古。
いままでに「封印切」は延若さん、鴈治郎さん、仁左衛門さんのものを弾いたことがあります。それぞれ演出も違いますし使う合方や独吟のきっかけも所々違ったりと附を見ているとこれが同じ芝居かしらというくらい違います。上方の芝居だし上記の三つの型が代表的なもので、今回の染五郎さんのもこのうちのどれかかなと思っていたら何と「播磨屋型」というのがあるのですね。
 資料で頂いた杵屋栄二師の附を見ると忠兵衛(勘三郎)梅川(梅幸)おえん(多賀之丞)八右衛門(三津五郎)という豪華な面々。
使う合方やきっかけが今まで経験した三つとこれがまた微妙に違いますが、全体的にすっきりした印象で江戸風という感じがします。

「第四回 市川染五郎の会」は 3月27日(火) 於 三越劇場
演目は「封印切」「うかれ坊主」です。

 22日は国立劇場の千穐楽。お正月頃に3月公演のチラシを見て、日数も短いし22日千穐楽でこりゃいいや、なんて喜んでいたら23日から26日まで茨城シリーズというのがおまけについていたのです。
 私は歌舞伎座居残りになったので26日までは「松竹梅」ひとつでお終いですが、来月私は御園座の「小笠原騒動」に行くことになりましてその旅の準備をしなくてはなりません。少しのんびり出来るかなと思ったらまた夜逃げの支度。
 しかしまあ2月から「加賀鳶」「新世紀累化粧鏡」と通し狂言続き。4月も3回目の「小笠原騒動」また長い芝居だぁと思っていたら5月は松竹座の「怪談敷島譚」に行くことになりまして4ヶ月通し狂言が続きます。これは体力勝負ですよ。
そういえば橋之助さんも2ヶ月続きで水の中の立ち廻りですね。

3年目突入の「BEN'S CORNER」これからもよろしく!

3月24日
 
この2日間「松竹梅」で終わっているので身体も気分的にもすごく楽です。いいお天気で暖かいし、いよいよ本格的に春の気配。東武線の隅田川の鉄橋から土手を眺めると桜のつぼみがだんだん赤くふくらんできまして、なかにはちらほら咲いているものもあります。残念なことに私は28日から名古屋に行きますので今年は隅田川のお花見散歩が出来ません。また来年のお楽しみということで今年のお花見は名古屋でします。

 来月、映画「ハンニバル」が封切りになります。
トマス・ハリスの作品は「ブラックサンデー」「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」と今までにすべて読んでその迫力にすっかりのめり込んで早く新作が出ないかなぁとずっと心待ちにしていましたが、いい加減に忘れたころになって去年「ハンニバル」が前作「羊たちの沈黙」から11年ぶりに出版されました(何と25年間で4作品)
 出てすぐに買ってどどっと読み通してその衝撃的な結末に「アラまぁ・・」と絶句。そのうちに「羊たちの沈黙」に続いてこれも映画化されるということを聞き、レクター博士も前作と同じアンソニー・ホプキンス!早く見たいなぁとそれからずっと楽しみにしていました。
 いよいよ4月に公開が決まり試写会の様子などがテレビ、雑誌をにぎわし私もだんだん落ち着かなくなってきたところに今月16日「ハンニバル・レクターのすべて」(新潮社刊)という本が出まして、我慢できずに買ってしまったわけです。この本は小説の舞台を写真入りで紹介していてフィレンツェのガイドブックのような感じで始まり、映画の台本(結果を知りたくない人は読んじゃいけません)あの最後の晩餐の料理を実際に作ってみたり、とまぁよくやったなぁという面白い本です。
 トマス・ハリスの4作品とパトリシア・コーンウェルの「検屍官」シリーズは私の愛読書でお薦めの逸品です。


4月5日

 3月28日から名古屋に来ていますが、出かける前の3、4日というのは何だかとにかく忙しかったです。
 名古屋行きの荷造り、「小笠原騒動」の資料の整理とお復習い、空いた時間には「二つ巴」を復習う(4月2日までに覚えなくてはならないのです)他いろいろ・・思いついたところからどんどんやっていかないと追っつかない感じ。
 26日は歌舞伎座の千穐楽、27日は染五郎さんの会、そして28日午後には名古屋乗り込み。すぐ稽古に入って附、総ざらい、30日は1回目の舞台稽古。芝居そのものは3回目ですから役者さんも体に入っているしこちらも決まっていますので稽古場ではスムーズですが、舞台稽古になると立廻りはたくさんありますし本水を使った道具ありで結構時間がかかりました。
 31日は幕間を本番通りに取っての通し舞台稽古、月が変わって4月1日には初日が明きました。
 「はぁー、これでようやく一段落だぁ」なんて思っていたところに歌右衛門さんの訃報を聞き「ガーン・・」。
藤間会での「関寺小町」、この日私も仕事で行っていまして舞台の袖から拝見していたのですがこれが最後の舞台となったしまったのですね。慎んで御冥福をお祈りいたします。

 2日には東京で仕事がありましたので初日1回公演が終わって帰京。夜東武線の鉄橋から隅田川を眺めると両岸は「夜桜や〜チツテツトチチテチリンチリトッチャン♪」てな感じでまぁどうも実にいい雰囲気で、屋形船がたくさん出ていました。

 3日、朝の新幹線で名古屋に戻りこの日は2回公演。4日も同じくで夜の部が終わるころにはヘロヘロにくたびれました。まだ始まったばかりなのにこれでは先が思いやられますが何となくペースがつかめた感じ。早いとこ体を慣らさないと。

 今日5日は嬉しい1回公演です。終わったら久しぶりに大須の方でもぶらぶらしてこよう。

 

 話は変わりますが、上のバイバイしているネコの写真。うちの商店街を夜歩いていてあるお店のガラスの向こうにちょこんと座っているのを発見。じゃらすとごろごろお腹出しちゃうし何とも人懐っこい器量良しちゃん、可愛いでしょ。

4月10日
 
7日に東京で仕事があり6日の最終近い新幹線で帰京。8日の朝名古屋に戻りましてこれでやっと2回の東京往復が終わりました。あとは楽まで御園座で平常営業となりますが、東京行って来いの間寝不足が続いたので帰ってきた日はとにかく眠い。2回公演をふうふう言いながら終えて、9日は「待ってました!」の1回公演。
 3時半に終わりますので楽しみにしていた「ハンニバル」を見に行ってきました。混んでいるかなと思ったら平日の夕方ということでガラガラ、指定席開放だったので丁度いい高さのど真ん中の席でゆっくりできました。
 ストーリーは原作を2,3回読んでいるのですべてわかっていますが、興味はあの長編がどんなふうにまとめて映像化されたのかというところにありました。
 で見た感想ですが、小説に比べるととてもあっさりしているなという感じ。もっともあれをそっくり映像にしたら大変なことになってしまいますので、登場人物もシーンもポイントがかなり絞られています。カットされた登場人物の中には、興味深いキャラクターもあったので残念。

 アンソニー・ホプキンス演ずるハンニバル・レクター博士の存在感は前作にも増して強烈なもので「羊たちの沈黙」では精神病院の服に拘束衣、噛み付き防止のマスクといった出で立ちでしか登場しませんでしたが、今回はアルマーニにグッチ、ボルサリーノの帽子と実にお洒落。美食家で博識、すべてに洗練されているレクター博士。ここ1番の決め所ではかなりおっかないです。イタリアの古都フィレンツェで優雅な逃亡生活を送っていますがこのあたりの映像は本当に美しく格好良くてイタリア独特の街の雰囲気が濃厚に感じられました。あー、行きたいなフィレンツェ。

 クラリスは「羊たちの沈黙」のジョディ・フォスターの印象があまりにも強いので、今回のジュリアン・ムーアは私がよく知らない女優さんということもあるのですがちょっとインパクトがなかったかな。何ヶ所かある有名なグロテスクなシーンは小説の通りにやっています。こんなふうになるのかなと何となく想像していましたけどそのシーンはかなり強烈です。
ちゃんと見てしまいましたが「む!む!む!」思わず身体中に力が入っていました。

 これだけ見ても充分楽しめると思いますがやはり前作「羊たちの沈黙」の小説、映画を見てからの方が衝撃的なレクター博士の人間像、クラリスとレクター博士の結びつき、あのマスクが何なのか?・・よくわかります。もう1度見に行きたいな。

宮部みゆきの新刊「模倣犯」。とにかく分厚いハードカバー上下巻の大長編で持って歩くのが大変ですが、面白くなってきました。

4月17日
 
やっとあと1週間になりましたが、ここに来て徐々にボディブローが効いてくるみたいに疲れてきて毎日ハァハァいいながら御園座の階段を昇り降りしています。 

 名古屋というところ、ホテルの近所、御園座の近所にコインランドリーがありません。電話帳で調べても中日劇場の裏の方とか何だか遠くてどうするかなぁと思っていたら御園座の楽屋の洗面所に洗濯機が置いてありまして、これが今どき珍しい二槽式なのです。
 今の洗濯機というとコインランドリーでは皆一槽式の全自動、我が家のもそうですが、最近の知性ある!洗濯機は水の量も洗濯物の量によって無駄なく出てきてグズグズと細かに動くのにはびっくりしました。子供の頃に見ていた洗濯機の豪快な渦巻きに比べてどうもその動きに覇気が感じられずどうも洗った気がしません。でもこれは省エネとか効率、生地を傷めませんとかいろいろ考えられていて確実に良くなっているわけでスイッチを一つ押せば最後まで出来ちゃうのですから便利です。使ってみると簡単なので「まあいっか」と別に目くじらも立てず日々過ごしていましたが、ここに久しぶりに見る二槽式洗濯機の登場。みなこれを見て「ひゃー二槽式か」なんていっていたのがコインランドリーが近所にないものでここで洗濯しちゃおうかということになりました。

1.洗濯する 2.排水 3.水を出しっぱなしにしてすすぎ 4.排水 5.脱水槽に移して脱水 という昔の洗濯機の手順を思い出し始めたのですが、久しぶりに見る豪快な渦巻きに「へー!」なんて感心して見とれていました。とにかく水をたっぷり使ってすすぎが出来るというのが良いですね。今月はこの洗濯機、大活躍でしょっちゅうガラガラ回っています。

 今月歌舞伎座で「幡随長兵衛」が上演されています。
この芝居の序幕「村山座の場」では劇中劇で「公平法問諍」という芝居をやっていまして、そこに私たち長唄も江戸時代の「大薩摩連中」として柿色の肩衣、前掛けに古式ゆかしく頭巾をかぶり正面に三梃三枚座っています。
 幕が明いて芝居が進んでいきますが、しばらくして酔っ払いが花道に現れて芝居が一旦中断、金平はじめ舞台上の役者さん達は「何だ何だ?」といって顔を見合わせたりしますが、私たちも「何ですあれは、困ったもんですなぁ」といった感じで芝居をします(ちょっと恥ずかしい)
 騒ぎが収まり舞台番が「立っちゃいけねえ立っちゃいけねえ」とやってから再び芝居が始まりますが今度は侍が花道に上がってきます。ここで再び芝居が中断しましてこれをきっかけに私たちは舞台のすぐうしろの扉から逃げ出すわけですが、これがどういう訳かたまに逃げ出せないときがあります。
 何故かというと役者さんからの「秘密のお達し」で大道具さんがその扉を裏から、かすがいで打っちゃうのです。こっちはいつものきっかけで「それっ」と立ち上がり戸を引くとかすがいでがっちり打ち付けられていますのでびくともしません。「あっ、やられた!」他に逃げ道がないし仕様がないので序幕の間そこにずっと座っているということになります。
 この侍が花道でいろいろ無理難題をふっかけているところに長兵衛があらわれ侍を追っ払い、まわりの役者さんと一緒に「親方どうもありがとうございました」なんていうとき私たちも一緒に「ははぁ」とお辞儀をしたり同じような動きをしなくてはなりません。時間にしてそんなに長いことではないのですが何とも居心地は悪いし恥ずかしいし、この陰謀にはまったときは「もう早く終わらないかなぁ」と冷や冷やしながらひたすら序幕の終わるのを待ちます。この場合は長唄全員舞台にいますのでまあ心強いのですが、別なパターンとしてある特定の一人または二人だけ居残りになるということがあります。
「今日は三味線のあの人、お友達が見に来ていらっしゃるようなので是非舞台に・・」なーんていう計画が持ち上がった時の他の長唄5人と舞台上の役者さんのチームワークというのは素晴らしいもので、舞台が明く前に皆目配せで「あの方ね」「ラジャー」「何にも知らないで、ムフフ」などと確認。
 知らぬは一人ばかりなり、幕が明いて芝居が進み先程のきっかけが来て立とうとすると、役者さんの一人がその人を「まあまあ」といいながら押さえ、別の一人が「三味線はわたくしがお持ちします」長唄の他の五人は通りすがりに、逃げようとしているその人の肩を押さえながら退出するというようなことになります。これもたまに裏切られることがあって自分も知らないうちに舞台居残りの計画に入っていたなんてこともあり油断も隙もありません。私も今までに何回か居残りになったことがあります。
 今月はどんなことになっているのでしょうか。

4月21日
 
うー、千穐楽まであと4日。
積もり積もった疲れもピークに達し、今週はサウナ、整体、マッサージの「てもみん」に行ったりしてどうにか乗り切りましたが、整体の先生いわく「お兄さん、足の長さがずいぶんずれてるね。右足の方が2センチくらい短いけどこれが腰痛の元かなぁ?」とのこと。足を引っ張ったり骨盤を押したりしてだいぶ元に戻ったそうですが、その3日後。サウナに行ってマッサージをやっている最中にマッサージのおばさんいわく、「お客さん足の長さが、ほら、こんなに違うけど気がついてる?」だって。
 1週間の間に2回も「足の長さがずれてます」なんて言われたのは生まれて初めてです。これ以外にも背骨もだいぶ右に傾いていると言われました。
 三味線弾きというのは眼や耳、撥もそうですが右方向に神経を使い、力が加わりますからだんだんそうなっちゃうんですね。今はとにかく身体中コチコチで、マッサージさんの指が通らないような感じで「てもみん」のお兄さんもはぁはぁ言いながらやっていて最後は指がひん曲がっていましたし、整体の先生もあまりの堅さに「こっちがどうかなりそう」といっていました。「マッサージ泣かせ」のベンちゃんですが、背筋は今にもグキッといきそうだし腰も何だかやばい感じで、あーあ、プールに行きたいなぁ。

 今月の28日に大阪のフェスティバルホールで歌舞伎舞踊公演があります。それに「茨木」(茨木童子、天王寺屋さん・綱、播磨屋さん)がありまして今暗譜の追い込みなのですがこの「茨木」、松羽目物で一番長いので曲だけ復習ってもたっぷり1時間くらいかかるので大変です。
 私の初めての「茨木」は仕事に入って2年目、河内屋さんの茨木童子に故辰之助さんの綱という顔合わせでした。古風なお顔の延若さんに辰之助さんの綱も立派でとても印象に残っています。それから本公演で2回くらい、あとラジオの放送でやったことがあるのですがそれからもずいぶん経っていますので今回は改めて覚え直すような感じです。
 「茨木」って子供の頃から好きなのですが、何か一番好きかというと幕切れで極った渡辺綱で、あの形は本当に格好いいですね。でもこれって三味線を弾くようになってから見ることが出来なくなってしまって(綱はお客さんの方を向いていますから当たり前なのですが)何だかつまらない今日この頃です。
 去年の暮に衛星放送で歌右衛門さんと松緑さんの「茨木」が放送されましたが、素晴らしい舞台でとても見ごたえがありました。今月はこれを見ながら復習っています。

4月最後の1週間の模様をば。

 24日に御園座が千穐楽。1回公演だったので6時には東京に着き、家に帰ってやっと一息つけましたが疲れもどっと出て、そのままごろっとしていたいなぁなんて思ったのですがやらなきゃいけないことを思い出すとどうも落ち着かない。急に「茨木」を復習ったり、来月の荷物を詰めたり何だかんだで結局寝るのが遅くなっちゃいました。

 25日は歌舞伎座へ。夕方「茨木」の稽古がありますのでそれまでの間「石橋」と「幡随長兵衛」を見て、「石橋」で初舞台の渡辺大ちゃんのお祝いで天王寺屋さんの楽屋に伺ってきました。天王寺屋さんのお部屋、片側は富十郎さんの鏡台が置いてありますが、大ちゃんサイドは大きなミッキーマウスのぬいぐるみを始めおもちゃの山。
富十郎さんが顔をしていらっしゃる横で大ちゃんはおもちゃに夢中でした。

久しぶりに歌舞伎座の客席から芝居を観ましたがやっぱり良いものです。久しぶりの播磨屋さんの長兵衛、格好良かった。

 26日今年初めての休みでした。休みと言っても「茨木」を復習わなきゃならないし買い物もしたいし考えていると何かと用事があってのんびりしていられません。「帯源」で帯を買って、三味線屋に行って消耗品、小物、今業界で流行の超軽量三味線鞄(これ本当にびっくりするくらい軽いのです)を購入、あと「長谷川」で草履を買って久しぶりに浅草でショッピング。その後は家内と「ハンニバル」を見に行ってきました。

 27、28日は「フェスティバル歌舞伎舞踊」で大阪へ。昼間ロビーで総ざらい、4時半から本順で舞台稽古。たった1日の公演で稽古も2回だけなのできっかけを整理したりするのにはちょっとしんどかったですが、まあ何事もなく無事に終わりました。
 フェスティバルホールって初めて行ったのですが大きなホールです。間口は歌舞伎座より大きくて、花道を見るのに附打ちさんが眼鏡かけないとダメだと言っていたのは可笑しかったです。6時50分ころにこちらは体が空いて大急ぎで支度をして新大阪駅へ。連休前ですが新幹線が空いていて助かりました。

 29日、夕方から5月松竹座「怪談敷島譚」の稽古。今日が初めてなので附師さんの台本を写させていただいて使い物と附の整理。一通り台本に書き込みましたがどうもまだモヤモヤしていてはっきりしません。この日は午後から雨が降ってきてすごい湿気。稽古場の中も人が増えるとあっという間に湿気てきます。クーラーを入れるとカラッとしますが座っていて寒くて仕様がなくて、クーラーを切ると三味線がペタペタ。ここのエアコンにはドライがついていないのでした。

 30日、一昨日行っていた大阪へ再び出発。今日は稽古が夜8時からなので3時の新幹線に乗るのですが、宅急便取りに来てもらったり台本の整理をしたり支度をしていたらすぐに出かける時間になってしまいました。連休前で混んでいるかと思った新幹線、まだそれほどではなかったです。東京は雨でしたが大阪に着くと青空が見えていました。「また来ちゃったよ」

 楽屋について三味線を出すと何と裏皮に2センチくらいの裂け目が!!。昨日の稽古場が湿気っていたので何か嫌な感じはしていたのですが、こんな来ていきなり皮が裂けているとは・・ガックリ。
この裂け目、裏皮の中心のおへそのところにひびが入ったのですが、ここは皮が厚いのでスパッとは裂けないのです。一応応急修理で裂け目をアロンアルファで塗り固めてセロテープを貼ったら今日1日はどうにかなりそうですがパカッといくのは時間の問題のようで、今回は予備の三味線を持ってきていないしどうしましょ。
この皮張ってからまだ約1月とちょっと、短い命だったなぁ。

 稽古は夜8時からだったので終わったのは11時半。ちょっと疲れたしただただ眠い!荷物バラシも程々にして就寝。ああしんど。