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十五代目片岡仁左衛門襲名披露
公文協東コース
PART2 (16日〜千龝楽)


7月16日  埼玉県熊谷会館
 
やっと夏の巡業らしくなってきて今日は気温32度、なるほど風が熱い!
ここも去年来ているので、自然と楽屋に足が向きます。今日も2回の公演を終えてまた終演後移動なのですが、明日17日は土浦なので土浦に移動するものと思い込んでいたらホテルのあるところはつくば学園都市とのこと。本当によく日程表を見ると土浦第一ホテルではなく、つくば第一ホテルでした。
 熊谷からつくば市まで直線で約80キロ、終演後の移動にしては結構大変な距離です。今日はバスに乗るとちょっとしんどいので私は仲間の車に乗せてもらって一足先にスタート。熊谷とつくばを直線で結んで、それと付かず離れずのロスのない一般道をひたすら走り続けるのですが、今まで走っていた道幅の広い幹線道路が、あるところから急に狭く暗くなって心細くなることしばしば。
 大きな間違いもなく1時間半走って10時半頃、つくば第一ホテル到着。本隊はどの辺かとバス組に電話を入れると私たちとは全然違うコースで、一旦東京近くまで戻り高速にのってつくばに向かったそうで、まだ後40分くらいかかるとのこと。結局バス組は2時間くらいかかったそうで、乗り打ちの移動にしてはこれはかなり強烈なものになりました。
 ひどく疲れていたのですがおなかも空いたので、ホテルに着いてから食事に出たりしてシャワーを浴びて寝たのは1時過ぎ。こういうホテル滞在時間の少ない時に限ってホテルが豪華というのは何だか皮肉ですね。昨日までのホテルに比べたら、今日は広いお風呂にダブルベッド、部屋は広いし天国と地獄のような差。言うことないのですが、かえって眠れなくなってしまいました。

7月17日  土浦市民会館
 
今、私はつくば市にいるわけですが、ホテルの窓から外を眺めると実にきれいに区画されている町です。広い道路に大きなビル、適当に緑があって整っているのですが生活はしやすいのかなあ。ホテルから土浦の会館までは車で20分ほど、去年も来ているので見慣れた町並みです。
 夜の部の「鳴神」が明いてから仁左衛門さんが浴衣姿で楽屋を歩いていらっしゃいます。ちょうどこの時間は仁左衛門さんは休憩時間なんですね。しばらくして楽屋の廊下が賑やかになりました。何だろうと覗いてみると、仁左衛門さんを囲んで会館の職員の方がにわかの写真撮影大会!。やはり女性陣はちょっと舞い上がっていまして、フィルムを巻き上げるのを忘れていたり横で見ていたら可笑しかったです。
 今日は終演後水戸に移動。土浦、水戸間は約40キロ、水戸街道を1時間走って10時頃ホリデイイン水戸に到着。ここはまぁ一泊で出るには勿体ないようなきれいなホテルで、群馬茨城シリーズ最後に大当たりが出ました。こういうところはゆっくり連泊したいですね。
 荷物を置いて食事に行きました。そばのロイヤルホストに入って注文して待っているとそこに時蔵さんが入ってきまして、「おっ、本隊が着いたのかな」とみると後から、仁左衛門さん、左團次さんも入ってきました。今日は皆さんファミリーレストランで夕食です。
 食事を済ませてホテルに戻ると11時半、今日も遅くなりました。 

7月18日  茨城県立県民文化センター
 
六日間の群馬茨木シリーズも今日が最終日、終演後帰京して明日は楽しい楽しい休演日です。このシリーズは思いの外移動がハードだったので、皆結構くたびれていますから朝からハイテンション、楽屋の中は賑やかです。
 水戸に来たのは10年ぶりで、何か覚えているかなあと思ったのですが、町の中も会館の様子もさっぱり記憶から消えていました。私を含め10年前に一緒に来た人が今回4人いて、ほかの人は「ああ、ここね」とか「この食堂覚えてる」とか言っているのに私一人が最後まで何も思い出しませんでした。今日は日曜日ということもあるのか昼夜とも大入りで、5回目の大入り袋が出ました。
 帰りの電車は21時25分発の「スーパーひたち」が指定だったのですが、終わって水戸駅に飛んでいったら20時50分発の「フレッシュひたち」に間に合いまして、ゆっくり乗変してお弁当を買って乗り込み、今電車の中でこの文章を打っています(只今我孫子に到着)あとは家に帰ってこれをアップすれば、おっとよしよし!。

7月19日  休演日
 
あーぁ、くたびれた。
お休みということで緊張の糸が切れたのか、どろんどろんに疲れてしまいました。かといってそうゴロゴロもしていられないので荷物を片づけたりして、午後から鍼の先生に行ってきました。旅の三点セットの重さでどうも身体中歪んでしまったようなかんじでしたが、背骨、頚椎一通りボキボキ鳴らしてもらったらすっと楽になりました。
 そのあと秋葉原に行って携帯電話の機種交換。今まで約3年使っていたのはデジタルで初めて重さが100グラムを切った、その頃では世界最小という機種だったのですがこの頃音声はブツブツ切れるしバッテリーはだめになるし交換することにしました。
 今度のはドコモの「N501i」という今流行のiモードの機種なのですが、このiモードというのは結構使えそうで面白いです。専用のアドレスで250字くらいのメールの送受信、乗り換え案内(まだこのくらいしかやっていないのです)など意外にストレスなく物事が運びます。ノートパソコンやPDAなどが起動していないときやそれらの端末を持っていない時でも携帯電話本体で時間差なくメールを受けて読むことが出来る、というのは便利かどうかこれから少し使ってみます。しかし何というか最新の機種というのは機能が多くてマニュアルは厚いし、迷わず使えるようになるにはずいぶん時間がかかりそうです。

7月20日  栃木県総合文化センター
 
休み明けの一日目は宇都宮往復です。
今日の会館には8年くらい前にこけら落としで来ていますが、あまり記憶にありません。外装も楽屋もまだきれいですし、舞台も大きくて反響も良いし使いやすいのですが、どういうわけだか楽屋中の空調が悪いのです。ほとんど冷房は効かないし湿気はすごい、という状態で三味線はこれ以上ポコポコにはならないぞというくらいこの旅一番の居心地の悪い楽屋となりました。
 宇都宮の駅を降りたときにあちこちに「餃子」の看板が目に付きまして、何なんだろうと思ったら宇都宮の名物なのだそうです。それなら食べてみようということになったのですが、お昼から餃子食べて臭くないかなと全員一瞬ためらいました。が皆で食べちゃえば気にならないだろうというのでお昼に出前をとって食べたのですが確かにおいしい餃子でした。美味しかったのですが、ニンニクやニラの感触がかなりストレートなもので、口に入れたときから「こりゃ結構臭うぞ」という感じ。同じ楽屋のお囃子さんが「うわっ、すごいにおいだなあ」「ビールが欲しいぞ」との発言。そのうち「同じ楽屋に一緒にいるにはこっちも食べちゃわないとだめだ」というので、お囃子さんも出前をとっていました。それから一日ニンニクの臭いに悩まされ、胃がもたれて大変でした。
 今日も昼夜とも満員で大入り袋が出ました。帰りは予定より早い新幹線に乗ることが出来て、十時半頃帰宅。

7月21日  板橋区立文化会館
 
いきなり本格的な真夏日がやってきまして、いやぁとにかく暑い!今日の会館は池袋から東武東上線に乗って大山で降りまして、商店街をちょっと歩いたところにあります。
 この旅日記によく「10年くらい前に来たとき」というのが出てきますが、これは1990年の萬屋錦之介さんを座頭とする公文協東コースの時のことです。その時にもこの会館に来ましたが、この日はとても悲しいことがありました。
 前日に錦之介さんの息子さんが交通事故死をされて、そのことをこの板橋の楽屋で私たちは知らされたのです。楽屋中沈痛な雰囲気の中、もちろん一番つらいのは錦之介さんご本人だったとおもいますが、何もなかったように気丈に振る舞われていました。
 この時の錦之介さんの演目は「瞼の母」。なんとも皮肉なことに芝居の中に「母」「子」「親子」のような科白がいくらでも出てきます。私たちがつらかったのは芝居が始まってからでした。かげの三味線を弾きながら、叫ぶような忠太郎の科白を聞いているうちに途中から泣けてしまってやりきれない思いでした。
そんなことがあったので、ここは思い出深いところなのです。
お昼過ぎまではカンカン照りだったのに、昼の「吉田屋」の頃には空は真っ暗、夕立のようなすごい雨が降ってきました。「吉田屋」が明いて暫くするとものすごい雷の音。建物中びりびりするような雷の音がひっきりなしにゴロゴロいっています。もう一時間早ければ「鳴神」の時に効果抜群だったのに、「吉田屋」では雰囲気ぶちこわしですね。
 昼の部が終わったころにはまだ雨の勢い衰えず、ますますひどくなりお客さんは足止めを食ってしまい、会館のロビーはごった返していました。それにしてもよく降り続いた雨ですが、夜の部が終わるころにはすっかり上がって、傘をささずに帰ることが出来ました。

7月22日  江戸川区総合文化センター
 
梅雨明けになったのでしょうか?朝からすごい日差しで、ちょっと外に出るのが憂うつな感じですが、今日は近場なので気が楽です。
 東武線で曳舟乗り換え、亀戸に出て総武線で新小岩下車。家を出てから40分くらいで江戸川区総合文化センターに到着。新小岩の手前で途中荒川を渡りますが、この平井大橋あたりまではよく自転車で走っています。うちのマンションのすぐ裏が荒川の河川敷で、舗装されたサイクリングロードがずっと続いているのですが、20分くらい走ると総武線の鉄橋に来るのです。ですから新小岩というところは電車を使わないで川沿いにくれば近いんですね。
 本日、やっと8月の歌舞伎座の稽古割りが出ました。7月29日から始まるのですが、この旅は31日までですから行けるのは8月1日の舞台稽古だけです。「朝顔日記」の舞台稽古は11時からなので、それに間に合うには甲府から朝7時台の特急で帰って歌舞伎座に直行しないとなりません。はぁー、大変だ。
 昼の部が終わったころから一天にわかにかき曇り、またもや不穏な空模様に。その後ちょっとパラパラ降ったようですが終演の時には上がっていました。

7月23日  厚木市文化会館
 
梅雨明け宣言が出て夏本番のすさまじい日差しの中、今日はちょっと遠い厚木です。新宿から小田急線の急行で約50分、本厚木下車。思っていたより距離がありました。この会館も一度来たことがあるのですが、いつのことだか思い出せません。
 今日は1時からの一回公演なので4時15分頃終演。終わったその足で横浜市金沢区の私の実家へ向かいます。明日、明後日が大船、小田原なので実家から通ったほうが近いのですね。しかし本厚木から実家に行くのが一苦労で1時間半かかりました。

7月24日  鎌倉芸術館
 
鎌倉と名がついていますがここは大船で、先日閉鎖された松竹のシネマワールドの隣にあります。去年公文協で来たとき、サービス券をもらって行ったのですが、アトラクションもぱっとしないし、建物中閑散としていてこんなんで大丈夫なのかなと思っていたのですが、やっぱりだめだったみたいです。手前のイトーヨーカドーと三越は賑わっているのにねえ。
 この会館は舞台も広く、楽屋もたっぷりしていてきれいでとても過ごしやすいところです。今日の公演は、早くに売り切れてしまったというのを友人から聞いていましたが、成程上の方の席までお客さんがいっぱい、大向こうさんも大勢来ていて盛り上がりました。昼の部が終わって外に出ると、凄まじい西日で会館の正面はまぶしくて目が開いていられないほど。食事をしてイトーヨーカドーをぶらぶらして楽屋に戻ると暑さですっかりくたびれてしまいました。
 普段歌舞伎座の黒御簾では床几に正座して弾くのですが、旅では会館の折畳みイスに座りますから足は痺れないし眠くなりやすいのです。というわけで今日の夜の部の睡魔には参りました。

7月25日  小田原市民会館
 
昨日と同じに根岸線に乗って新杉田から大船へ。大船から小田原までは東海道線で約50分。今日は日曜日ということもあり、海に行く人で東海道線はすごく混んでいますので、750円払ってグリーン車でのんびりと東海道を下ります。
 小田原というのも暑い所という印象が強いです。暑いところにきてここの会館は古いので冷房があまり効きません。楽屋も狭く、今回は地方が全部入りますから荷物を広げるのが大変なのですが、皆でわいわいやっているうちにうまく収まってしまいました。
 今日は小田原提灯祭りなので、駅からのメインストリートはお神輿やら担ぎ手がいっぱいで大騒ぎです。イベントもあちこちで行われていますので、開演中に花火の音や音楽が舞台まで聞こえてくることもしばしばでした。昼夜の間にちょっと外に出ると相変わらず熱風が吹いていて暑いのですが、日差しが弱くなって少しカラッとした感じになりました。夕方からは氷の彫刻コンテストが始まり、見た目も涼しげでぶらぶら歩いていて気持ち良かったです。
 以前に書いた「左團次コロン」ですがいつの頃からかテスターが置かれていまして、ちょっと使ってみました。意外なことに紳士用、婦人用とも、左團次さんのイメージとは違い?だいぶ軽い感じです。
 明日は休演日なので終演後新幹線で帰るのですが、私の用事の終わるのが8時15分頃なので乗ろうと思っていたのは9時12分のこだまでした。しかし時刻表をもう一度見ると8時34分というのがあるではないですか。会館から駅まではゆっくり歩いて15分、これはいっちょう挑戦してみることにしました。
 弾き終わって楽屋に戻ったのが8時12分、日ごろ鍛えた「片づけ技」で2分で三味線、着物を片づけトランクを閉めて会館を出たのが8時15分。あとはお祭りのあとをひたすら歩き続け、小田原駅に着いたのが8時25分。乗変をして新幹線のホーム(これが小田原駅の1番奥なのです)まで歩いてホームに上がると8時34分の新幹線がちょうどホームに入ってきました。日曜日だし混んでいるのかと思ったら、がらがらで良かったです。
 もう汗びっしょりでしたが、目標を達成した満足感に包まれつつ小田原をあとにしました。
明日は最後のお休みで、27日からは大詰め東海道シリーズです。

7月26日  休演日
 
暑くてあまり寝られなかったので、朝起きると徹夜明けみたいな眠さ。
 今日はお台場のパレットタウンに出来た大きなペットショップに行って、犬や猫と遊んじゃうという予定だったのですが、どうにもくたびれてしまってうちでのんびり過ごすことにしました。眠くなったら昼寝して、起きたらお稽古して、といった具合に気の赴くままに過ごして最後の休演日もおしまい。あと滞っていた旅日記もようやくアップして帳じりが合いました。

7月27日  沼津市文化センター
 
東コース大詰め、今日から東海道を下ります。こだまで三島まで行き、三島から在来線で一駅、沼津に到着。ここの会館はなぜかレストランだけ覚えていました。舞台も大きいし、楽屋も小ホールの楽屋を開放したので部屋数が多くてゆったり。小ホールの舞台は床山さんと衣装さんの仕事場になっていまして、こちらも貸し切り状態ですから広々としています。この様子が小ホールの楽屋のモニターにずっと映っていて面白かったです。
 今日は朝から蒸し暑かったのですが、夕方から小雨が降って蒸し暑さに拍車がかかり、終わって楽屋を出るとムワッとすごい湿気でした。終演後バスで静岡に移動、約1時間かかりました。楽までずっとこんなパターンが続きます。

7月28日  静岡市民文化会館
 
ここ静岡では以前、台風の直撃にあったことがあります。こちらが静岡に乗り込んだ夜に台風が上陸。翌日の公演日の午前中まで大暴風雨で、昼の部が終わるころには台風一過でスカッと晴れました。楽屋口で「いやぁ、晴れたねえ」なんていいながらふと地面を見ると、折れた木の枝に混じって雀が2羽、風で叩きつけられたのか物言わぬ屍となっていました。
 ここの会館は外見からは想像がつかないほど規模が大きく、大ホール、中ホール、(小ホールはあるのかなぁ?)とありまして、楽屋口を入るとそれぞれ向かい合ってドアがあります。
 去年来た時のことですが、当然歌舞伎は大ホールだと思ってドアを開けるとオーケストラのチューニングの音が聞こえて「あれっ?何で違うものやっているんだろう。ひょっとしてホールを間違えたかな」急に心配になってきょろきょろしていると、反対側の中ホールのドアの奥に見慣れた行李が置いてあって一安心した、なんてことがありました。
 中ホールといっても設備は充実していて、この旅初めての舞台から直角に伸びる本物の花道があります。長さも歌舞伎座より少し短いくらいの立派なもので、やっぱり本物の花道は役者さんの出入りが映えます。
 今日は終演後、浜松に移動。大急ぎで支度をしてタクシーで駅に行くと、まったく予定に入っていなかった前の新幹線に乗ることが出来ました。9時10分に楽屋を出て、9時18分に乗ることが出来たのですから、急いだ甲斐がありました。

7月29日  アクトシティ浜松
 
浜松の駅前に聳え建っている大きな建物が「アクトシティ浜松」で、ここにはホテル、劇場、ショッピングモールがあります。
 私は初めて来たのですが大きいホールです。なんでも新国立劇場と同じ作りだそうで、スライドの舞台の奥に大きな回り舞台があり、それも前方にせり出してくるそうです。とにかく広い舞台でテニスはもちろんサッカーも出来そう。広い舞台ですと道具もゆったり組めて、仕事がしやすくなりそうなものですが状況はあまり変わりません。こちらの道具の大きさは決まっていますから、横から見ると舞台の前の方にキュッと詰まって「吉田屋」の舞台が組んであって、うしろはがらーんと空いていて勿体ない感じ。新しいだけあって舞台上の空調はよく効いていて、汗もかかず浴衣もさらさらしていて気持ち良く仕事が出来ました。楽屋にいると爽やかで良いのですが、外は日差しも強く蒸し暑くて10分と歩いていられません。
 今日は終演後名古屋へ移動。終わってから間に合う新幹線は終演30分後の9時17分だったので、仁左衛門さんはじめ、左團次さん、スタッフ、地方などほとんどが乗ることが出来て、9時51分名古屋着。荷物を置いてから、山本屋に行って黒豚入り味噌煮込みうどんを食べてきました。どうもあの濃い味は疲れているときには食欲が出ていいですね。

7月30日  春日井市民会館
 
今日は名古屋から中央本線快速で20分、春日井です。去年の公文協はここが千龝楽でしたが、終わったあと大急ぎで東京に戻ったら歌舞伎座の舞台稽古に間に合ったなんてことがありました。
 ここの会館は昨日の浜松とうって変わってとても狭いので、大道具さんが大変でした。「吉田屋」で襖を引こうとすると後ろにつっかえたり、引っ込めた張り物を捌くのに一苦労。しかし仕事とはいえ、毎日違う劇場で上手く組み立てるものです。
 今日は終演後が一仕事です。千龝楽の公演地、長野県駒ヶ根へバスで2時間半の移動で到着は11時を過ぎるのではないかとの予想。
 バスで3時間、4時間という移動は旅には付き物で、慣れてはいますがかなり疲れるものです。乗っていれば目的地に着くのはいいのですが、嫌なのは煙草の煙。結構煙草を吸う人は多いので、長時間走っているとバスの中は白く曇ってきます。今日もかなり空気が悪くなってきて、休憩の時に窓を全部開放。着ているものは煙草臭いし、頭痛はひどいし、もうちょっと換気が良ければバス移動が快適になるのですが。
 途中、中央道の飯田を過ぎた辺りで休憩でバスを降りたのですが、さすが長野県、涼しくて気持ち良かったです。駒ケ根という地名は、中央アルプス駒ヶ岳の麓なので「駒ケ根」なのかなぁ。走るうちに「中央アルプス駒ヶ岳ロープウェイ」乗り場行きのバスや、「駒ケ根高原スキー場」という看板を見かけました。予定より早く11時前にホテルに到着。しかし最後の最後に来てこの移動は効きました。酸欠による頭痛、背中や首は痛いし、早く休むことにします。

7月31日  千龝楽 駒ケ根市文化会館

 駒ヶ根

 朝カーテンを開けると、すぐそこまで山が迫ってきていて、青空とのコントラストが実に清々しいです。高原の風は涼しくて気持ち良いしクーラーいらず、三味線を持たないで遊びに来たいなあ。
 ここの会館には今までに3回来ていますが、こんなに晴れて景色がいいのは初めてです。改めてガイドマップを見ると、駒ケ根市というのは中央アルプスと南アルプスの間に位置しています。中央アルプス側には、駒ヶ岳、宝剣岳、伊那前岳、南アルプス側には北岳、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳など3000メートル近い山々に囲まれていて、山に雪が残っているころに来たら素晴らしい景色が見られるのでしょう。
 いつの頃からかここ駒ケ根は「ソースかつ丼の街」になったようで、町中にソースかつ丼のかんばんがあります。ソースかつ丼というのは、どんぶりのご飯の上に刻んだキャベツと揚げ立てのかつをのせて、特製のソースをかけたもので、まあ豚カツ定食をどんぶりにまとめてしまったようなものです。この特製ソースが店によってレシピが違うそうで、いずれも食欲をそそる味となっています。うちの楽屋でも何人か食べに行っていましたが、感想はというと「美味い」「邪道だ、あれはかつ丼ではない」「仕事の前に食べるには胃がもたれる」「ひれかつよりロースの方が風味がある」「ソースは少なめでご飯は堅いほうがいい」などなど。楽屋は白熱した「ソースかつ丼」討論会となりワイワイやっていたのですが、今回話の種に食べたからまぁいいか、ということで皆落ち着いたようです。
 今日は千龝楽なので松竹の人や関係者も大勢東京から来ています。開演30分前くらいに仁左衛門さんも楽屋入りされ、各楽屋に「千龝楽おめでとうございます」とニコニコしながら回っておられました。
 ここも二回公演なのですが、私は明日11時から歌舞伎座で「朝顔日記」の舞台稽古があるので昼の部でお役御免、一足先に帰らせていただくことになりました。本隊は終演後甲府に移動、泊まって午前中に帰京なのです。
 駒ケ根から帰るにはまず飯田線に1時間ゆられて、中央線の岡谷に出ます。岡谷からは特急スーパーあづさで2時間20分、乗り換えを入れて約4時間かかって新宿に着きました。折しも今日は隅田川の花火で、もしかすると間に合うかなと思ったのですが、すごい渋滞に巻き込まれ今年も見ることが出来ませんでした。うちのマンションの売り文句は「隅田川の花火が目の前に!」なのですが、いまだに私はチャンスに恵まれていません。
 
 夏の巡業というのは本当に身体にきついのですが、仁左衛門さんも一ヶ月間お元気そうでなによりでした。8月末には西コースが始まりますが、こちらは残暑がきびしく移動がハードですから東よりもしんどいかもしれません。東西ご襲名の旅、ご無事に終わることを祈りつつ、楽屋日記「公文協東コース編」は今日で終わらせていただきます。
 
 一ヶ月間長々と書いて参りましたが、わざわざBEN'S CORNERに来てくださった皆さま、どうもありがとうございました。