8月8日
旅から帰ってきて何だか訳がわからないうちに初日が明き、一週間が過ぎました。初日、二日目あたりは大変でしたが、「朝顔日記」のカゲの用事というのは、蛍狩りの独吟の段取りさえはっきりすればあとは普通の合方をぽつぽつ弾くだけなのでそんなに大変ではありません。明いて1時間半で黒御簾の仕事は終りで、私は今月これでお役御免です。
しかし今月は芝居のほかに、NHKのラジオの録音や国立劇場の研修生の発表会「音の会」、養成課のお稽古、月末にはお笛の会に舞踊会といろいろあり、復習うものがたくさんありますから時間が出来てちょうどよかった。
昨日は9月南座の「小笠原騒動」の打ち合わせがあり、私も行ってきました。橋之助さん、染五郎さん、翫雀さん、扇雀さんに衣装、床山、長唄、囃子、そして演出の奈河彰輔さんが歌舞伎座二階の橋之助さんの楽屋に集まり、顔合わせを兼ねて第一回目の打ち合わせ。昨日は衣装と鬘の細かい打ち合わせになりましたので、私たちは途中で失礼しました。
この芝居、黒御簾の用事は結構大変です。近いところでは猿之助さんが昭和五十二年に上演していますが、今回は故実川延若さんが延二郎時分に演じられた時(昭和二十年代後半の中座だそうです)のやり方で行くとのこと。この時の附は関西の故杵屋富造さんのもので、筆書きの字も見事な附帳なのですが、達筆すぎて読めないことも。附に出てくる役者さんの名前も、「雛助」「雷蔵」「仁左衛門」「富十郎」というような面々。
使っている曲、相方(上方ではこう書きます)も私たちにはなじみのないものが多く、弾いてみてもノリや曲調がピンと来ないのですね。これも早いうちに資料を集めて取り掛からないといけないし、何だか忙しくなってきましたよ。

NHK502st
8月11日
いやー、毎日暑いですね。
今日はNHKのラジオ放送「邦楽のひととき」の収録でNHKに行ってきました。ラジオの録音は1年ぶりくらいでしょうか。今までに4回くらい来ていますが、目の前にマイクがどんと置かれている、というのはものすごく緊張します。
西玄関から入ってエレベーターで5階へ、ここはラジオのスタジオが集まっています。2時に全員集まり、唄の人は声出しをしたり三味線は調子を念入りに合わせたりするのと同時にコンソールの方ではマイクテストや全体のバランスなどを調整していきます。最終的な細かい打ち合わせをして、皆の気持ちが整ったところでいよいよ本番。
今日収録するのは「橋弁慶」です。ラジオに限らず録音の時は、よほど目立つ間違いをしないかぎりは、終りまで通して録ってしまいます。やはり一回目の方が集中力が強いし勢いもあります。これが2度3度の録り直しとなると疲れてきますし、安全な方に逃げますから勢いもなくなっちゃいますのであまり良いことはありません。
今日の録音ですがそれほど目立ったこともなく終りまで行きました。皆それぞれ納得のいかないところや反省もありますが、それは自分への責任、戒めということでこのテイクでOK、無事終了しました。

向かって左より 文五郎さん、五七郎さん、私
8月21日
いやー、10日ぶりの更新になってしまいました。11日のNHKが終わって、次は国立劇場の「音の会」、その上に9月南座の「小笠原騒動」の稽古が入り調べものや復習うものが山とあってパソコンを触る気にもならずすっかりご無沙汰してしまいました。
14、15日と国立劇場養成課の音楽関係(竹本、囃子)の方の発表会「音の会」が催され、私は「四季の山姥」と「引窓」のかげに出ていました。養成課の卒業生が主役の会ですが、演奏会となると私たちもかなりのプレッシャーでとても緊張します。
以前は8月は歌舞伎は休み(SKDや三波春夫公演でした)だったので、稚魚の会、歌舞伎会、葉月会など勉強会が催されたと思うのですが、この頃は歌舞伎座が開くようになってしまったので、出られない人も多いようです。「音の会」にしても皆仕事の合間を縫って行ったり来たりしていたのでお稽古はあまり出来なかったし、実際本番が終わって稽古不足だったなあという感じでした。そういう所は今後考えていかないといけないですね。
16日は「小笠原騒動」の本読みに出たのですが、これは文字通り皆で本を読みあわせる稽古なのでこちらは「ここでこの合方だ」とか附師の方がざーっと附のアウトラインを考えるといった感じで、本格的に音を入れるのは26日過ぎの稽古からになりました。
明日22日は向島の見番で笛の望月長次郎さんの会があります。
20日はその下浚いで、初めて向島墨堤組合に行きました。
仕事上あちこちの見番(渋谷丸山町、赤坂、新橋、芳町、柳橋、浅草など)に行きましたが、向島は散歩で前を通ったりすることはよくあっても仕事で行く機会がありませんでした。私の家は向島のちょっと先なので、夕方自転車で見番界隈を走っているとお座敷に行く姐さんが歩いていたりして実に格好良いのです。
明日のその会の出演者はほとんどが芸者さんなので、奇麗な粋な人がたくさんいてなかなかいい眺めでした。今では花柳界は数えるほどしか残っていませんが向島は若い芸者さんも大勢いるし、貫録のある姐さんも達者だしまだまだ健在、意気盛んです。こういうところでお洒落に遊んでみたいですね。
なんの話だかわからなくなってしまいましたが今日はこの辺で。
8月22日
今日は望月長次郎さんのお笛の会の当日です。
「朝顔日記」が終わってから向島の見番に向かいます。会は11時から始まっていまして私たちの出番は3時頃から。下浚いの日に壊れていたクーラーは直ったようなのですが、舞台のある二階は大変な暑さでした。舞台の暑いのは当たり前ですが、客席も変わらない温度なのか、お客さんは皆扇子をぱたぱたしていました。
六番ぶっ続けにどどっと進みましたが、「常磐の庭」「安宅の松」「鏡獅子」など骨の折れる出し物が続いたので終わったときにはずいぶんくたびれました。
盛会のうちに無事終了して、お食事をということで近所のお寿司屋さんへ行きました。行ってみると今日出演された向島の芸者衆が大勢来ていてなかなか華やかなお座敷!
食事をしているうちに芸者さんが入れ替わり立ち替わりビールを持ってやってきて即席のお座敷状態になり、すっかり賑やかになってしまいました。それにしても向島の芸者衆は若くて奇麗な方が多いのにはびっくりしました。
ちょっと用事があったので私は先に失礼したのですが、水戸街道で芸者さん二人に見送られてタクシーに乗りました。
ちょいといい気分でした!
8月25日
昨日の雷はすごかったですね。幸い私は家にいたのですが、閉めてあるサッシはビリビリいっているし、障子を通して稲光が光っているし、外を歩いていたら怖かったでしょうね。夜、マンションで撥を当てて三味線を弾くのは結構憚られるのですが、昨日ばかりは表の雷鳴に消されて大丈夫でした。
さあ本日は、「8月納涼歌舞伎」千龝落です。
どうも今月は慌ただしいうちに終わってしまいました。今日楽屋では公文協西コースの荷出しで、5個のジュラルミンのトランクに皆の荷物を詰めて楽屋口に運びます。左團次さんや時蔵さんの荷物も早々と出ていました。総勢約70名の荷物を20トン積みのトラック3台に乗せて旅が始まります。この荷物が無くなると今度は私の行く京都南座行きの荷出しになります。「小笠原騒動」も長い芝居ですから落ち着くまでに時間がかかりそうですし、まだしばらく忙しい毎日が続きます。
話は全く変わりますが、今まで通信に使っていたドコモのPHSを昨日、「MobileCard P-in」という新発売のカード型のものに機種変更したのですが、これの64Kでの通信は実に早くて快適です。カタログ上ではWindowsでしか動作保証をしていないのですが「611S」用のモデムスクリプトを使うとMacでも支障なく使えます。そしてこのカードで携帯電話のモデムカードも兼ねてしまうというのが便利です。
興味のある方は一つどうぞ。
9月2日
歌舞伎座が25日に終わって26、27日と舞踊会の本番、つぼ合わせが続き、28日からは9月南座の稽古。あれよあれよという間に9月になってしまい、本日は京都に乗り込みというわけで、また一ヶ月のホテル暮らしが始まります。
今日は2時から顔寄せ、お祓いのあと「小笠原騒動」の総ざらいがありました。この芝居には早替わり、本水をつかった立ち廻りや仕掛けがありますので場面によっては舞台で総ざらいをやったり、明日の舞台稽古の備えて準備が進みます。
今日はそんなにかからず8時頃終わりましたが、明日は1回目の舞台稽古。細かいところを徹底的に直しながらやりますので何時間かかることやら予想がつきません。しかし明日ちゃんとやっておかないと明後日の通し舞台稽古(幕間も本番通りに時間をとってやります)に差し支えるので、たっぷり時間をかけることでしょう。
去年の9月はコクーン歌舞伎の「三五大切」だったのですが、あの稽古は本当に大変でした。勘九郎さん、橋之助さんが主役を交代するので4時間を越える芝居の舞台稽古が1日2回で、それぞれが微妙にきっかけや科白が変わりますから、神経的にも体力的にも過酷な稽古でした。それに比べると今月の芝居は全然楽かなという気がしますが、まあやってみないことにはわかりませんね。
ということで今月は京都から楽屋日記をお送りします。
9月6日
9月5日、南座の「小笠原騒動」の初日が明きました。
いったいどのくらい時間がかかるのかと案じていた3日、4日の舞台稽古ですが、思いの外テンポよく大きなトラブルもなく終わりました。この芝居の見せ場の水車小屋の立ち廻りでは橋之助、染五郎ご両人、息が切れてあとの科白が出なくなるくらいの大熱演で大変な運動量です。この水車小屋の屋根というのがかなり高く、そこから下の水槽に飛び降りたりするので橋之助さんは「こりゃ本当に怖いよ」とおっしゃっていました。
この立ち廻りの時に客席の最前列はかなり水が飛ぶのでビニールシートが配られるようですが舞台稽古の時、客席の最前列でこのモニターをやっていたのが三田寛子さんと橋之助さんの二人の坊ちゃんで舞台から飛んでくるしぶきをシートで避けながら楽しそうに見ていました。
若手4人組の熱演は言うに及ばずですが、嵐徳三郎さん、上村吉弥さんら脇を固める面々もきっちりしていて気持ちいいです。多くをここに書くのはやめにして、あとは皆さん見てのお楽しみに。
9月13日
初日が明いて一週間、仕掛けの多い長丁場の芝居ですが大きなトラブルもなく順調に進んでいます。お客さんの入りもまずまずで、客席全体の雰囲気もいい感じです。
私はというと、この芝居の二回公演に体が慣れるのに思いの外時間がかかりまして、それに加えてここ一週間の京都は連日35度くらいの凄まじい残暑!楽屋に入るまでに身体がガックリしてしまいましていやー、きつかった。
何をやってもすっきりしないので4日くらい前に仕事を終わってから大阪までジムに行って(私が東京で通っているスポーツクラブが京橋にあります)マシンで汗をかいて、アクアウォーキングをしたら、それから身体がすっきりしてきましてようやく普通になりました。
(うわっ!ハッキネンがスピンしてリタイア)
すいません。今テレビで、F1モンツァでのイタリアGPの最中なのですが、悠々と先頭を走っていたハッキネンが急にスピンしてコースアウト、レースをやめちゃいました。
私はフェラーリファンなので「おーっ!」という感じなのですが、いやーホントに何が起こるかわかりません。
4,5年前の天王寺屋さんのイタリア公演の時、ミラノで千龝楽を迎え帰国するまでに2日くらい休みがありました。
松竹がベネツィアへバスでの日帰り観光を企画して本隊は朝早く出掛けたのですが、私は家族(家内、私の両親、弟)が来ていたのでスイスとの国境近くのコモ湖に行きました。ミラノから電車で小一時間、静かな街で遠くにはヨーロッパアルプスが見えました。のんびり街を歩いて買い物をしたりして、その帰りの電車でのことです。
外を眺めていると駅に着き、止まった駅の名が「MONZA」。
居眠りをしていた弟を起こし、「これってF1やるモンツァ?」「ん?そうだそうだ!」てんで途中下車してサーキットを見に行く、なんて事はしませんでしたが、駅の看板を写真に撮りミラノへ戻りました。それ以来どうもモンツァでのイタリアGPというとワクワクしてしまうのです。
ミラノの町にF1のオフィシャルショップがありまして、F1マニアの弟を連れていったら興奮してウィリアムスのブルゾンやら帽子やら、日本では手に入らないものを買い込んでいました。この店で丁寧に応対してくれた方が年配の品のいいご婦人で、おおよそこんな店に似会わない方なのです。詳しい人は他にいるのかなと思ったら何とこのオバサマがオーナーで、その知識の豊富なこととマニアックなのにはびっくりしました。
あーぁ、またイタリア行きたいなぁ。
明日は待ってました!の一回公演です。
9月15日
相変わらず蒸し暑い京都ですが、今日は突然九州地方に現れた台風が近づいてきた影響で朝から荒れ模様の天気です。私は10時頃楽屋に入りますので、雨には降られなかったのですが、丁度三味線を弾いているお昼頃は雨風ともすごかったそうです。午後には台風は熱帯低気圧になり、すっかり治まって曇り空。気温が下がってとても過ごしやすくなりました。
今日は観劇に来た友人二人と夜食事に行く予定になっていまして、行くお店も大体決めていました。夜の部の仕事を終えて外に出ると、昼間よりもまた少し気温が下がって涼しくて実に気持ちが良いのです。四条大橋を渡りながら鴨川を見るとあちこちの川床に灯が入り結構お客さんが入っています。
「おっ!!」
空を見ると薄ぼんやり月も出てきているし川風も心地よく、これはかねてより考えていた床でビールを飲むには絶好の機会ではないか。
てんでその足で先斗町のおなじみのお店に行って席を取ってもらい急遽行き先変更、終演後床でビールとなったわけですがこれは大当たりでした。風はひんやりしていて時間が経つにつれ雲が晴れて星空になり、気持ちの良い一時を過ごしました。
9月16日
今日は中日です。序幕の明く前にいつもの中日の仕事を済ませ、12時半頃弾き終わって楽屋に帰ると、南座よりお弁当が!
なんでも今月は、思いのほか大入りだそうで楽屋内全員に鰻のお弁当が出ました。そういえば今までの9月の南座というのはあまりお客さんが入っていた印象がありません。稽古の頃には「今月は入るのかなぁ」なんて言っていたのですが、客席を眺めるとこれが連日よく入っているのです。最近では切符を取るのが大変なくらいだそうで結構なことですね。
9月24日
今日は台風が関西方面をかすめるということでどうなることかと思いましたが、京都方面は風が強いのと、たまにばらばらっと来る大粒の雨くらいで何とかなりました。
千龝楽近くになって来月の金毘羅でやる吉右衛門さんの新作舞踊「巴御前」の譜面とテープがようやくそろいまして、これから覚えなくてはなりません。覚えるといってもこの曲、決まると1時間ちょっとの長さになりますので一筋縄ではいかないでしょう。これから約1週間、難行苦行の日々が始まります。
先日の「床でビール」を共にした友人Bさんと夜、食事に行きました。Bさんおなじみのそのお店は加茂街道沿いにありまして、とても落ち着いた素敵な空間でした。美味しいワインとチーズ、お料理を頂くうちに夜は更けて、その帰り道。
外に出ると台風一過の夜空に仲秋の名月が!
名月を愛でて、とても気持ちのいい夜を過ごすことが出来ました。
9月25日
台風が通り過ぎて今日は快晴、暑い一日でした。暑いといっても風はもう秋の風になっていますが。
明日は千龝楽なのでホテルの荷物を片づけたりで忙しくなってきました。このあと金毘羅に行きますから金比羅行きの荷物と自宅に送る荷物を分けて、部屋の中はだいぶ片づきました。あとは明日フロントに下ろせばいいというところまでやって私には関係のない「茶壺」のビデオを見ました。
昭和58年1月の歌舞伎座、天王寺屋さんの「茶壺」ですが、これは私が大学3年の時に、初めて歌舞伎座で何日間か三味線を弾かせていただいた思い出の舞台です。
改めてみるとこの時の天王寺屋さんはすごい、見事です!
自分には、せっぱ詰まった覚えなくてはならない曲があることも忘れて暫く見てしまいました。
9月26日
さあ千龝楽です。
今日は一回公演ですが、千龝楽ということで普段とは違うお楽しみがありました。
二幕目に橋之助さんと扇雀さんが客席をぐるっと歩く場面があるのですが、客席におふた方が降りたところで揚幕から翫雀さんと染五郎さんが農民姿でいきなり登場!
あらかじめ話が通っていたかはわかりませんが、橋之助さんは「何だ何だ??」という感じで二人のやりとりを見ていました。その二人はひとしきり騒いで上手に入ってしまうのですが、その入りに小唄の「お互いに」をやって下さいと染五郎さんからの注文。二人で掛け合いをやっていますからどこできっかけの科白が来るかわからないのでちょっとしたスリルがありました。
私は前半を弾いて終りですから、後半に何かハプニングがあったかはわかりませんが、楽だし何か変わったことをやったかもしれません。私は二幕目まで弾いてお役御免、9月公演無事に終わりました。
どうも気が抜けたのか帰りの新幹線ではほとんど寝っぱなし。
東京に着いたら涼しいのでほっとしました。
来月の前半は「こんぴら歌舞伎15周年記念舞踊公演」に行きます。しかし年に2回も金丸座に行くことになるとは思わなかったなぁ。
10月1日
9月26日に京都から帰ってきて27日には藤間宗家の稽古場で新作舞踊「巴御前」の稽古。全員で演奏するのはこの日が始めてで、台本がありませんので筋はわからないし、とにかく譜面を見ながらきちんと弾くことに集中してその日はおしまい。次の日からはこんぴら舞踊公演全体の稽古になりました。
ここで予期せぬ出来事!
歌舞伎座の「茶壺」の稽古に人がいないので来てくれませんかとの連絡、それもワキなのです。譜面を見ながら弾くといってもこれはやっつけでは出来ないので「巴御前」を覚えるのに頭の中がグジャグジャの状態の中急遽「茶壺」を復習うことに。29日は「茶壺」の稽古に行きましたが、天王寺屋さん口跡明瞭で面白かったです。
はたして金毘羅に乗り込むまでに新曲が覚えられるのか、こんな状態のまま東京の稽古が終わってしまいました。
はぁー心配だ、憂鬱だ。
明日は琴平行き、9時羽田集合です。
10月2日
今日は琴平に行くだけで稽古は何もありませんから、気楽な移動日のはずなのですが新曲がまだどうも覚えきれないので何だか憂鬱です。でも譜面を見ながら暗記を繰り返していた効果が現れて、だんだん頭の中で曲が流れてくるようになってきました。
今朝は早かったのでお昼には琴平に到着。すぐ金丸座に楽屋を作りに行きました。この日の琴平は大変な蒸し暑さで、金丸座についたころには皆汗びっしょり!楽屋をセットしたあとは早々にホテルに戻り新曲覚えの追い込みに。
今日琴平の町はお祭りのようで、昼間から太鼓の音がドンドコドンドコとても賑やかでした。夕方ホテルで三味線を弾いているとその太鼓の音がだんだん大きくなってきてすごいんですね。こりゃ見に行ってみようというので琴平の町の中心の四つ角に行くと4台のお神輿があって、その神輿の中で太鼓をたたいているのです。とにかくすごい音で、琴平の町中強烈なビートでうねっている感じ。太鼓の音とリズムには人を興奮させる何かがありますね。
このお祭りは琴平の氏子のお祭りだそうです。
写真のように実に迫力のあるお神輿で、担ぐ棒が前後に長く延びていて真ん中の櫓部分に大太鼓があって、その狭い中にお兄ちゃんが4人入って休みなくずっと太鼓を叩き続けています。これを担いで突き出た角のような担ぎ棒をぶつけて、力比べというか喧嘩をするのです。担ぎ手の「ウワーッ」という声と太鼓の大音響で、ぶつかり合う一瞬はすごい迫力。いやー面白いお祭りでした。
時間を忘れて見ていたのですが、急に我に返ってホテルに戻り再び最後の追い込みにかかりました。
10月3日
今日、明日と金丸座で全演目の舞台稽古が行われますが、今日は「巴御前」の一回目の舞台稽古です。だいたい曲は頭に入ったのですが、まだ油断ならない危ない状態なのできっかけやあやふやなところを紙に書きだして緊張の中、初日通りの舞台稽古が始まりました。「巴御前」は決まると1時間くらいの長さになりますが、今日は緊張していた所為か、あっという間に終わってしまった感じでした。私自身も弾きながらそんなにカッカとしないで、曲が整理できていたのでちょっと安心しました。
この「巴御前」とても渋い色調の舞台面なので客席から見たらきれいだろうなぁと思います。

10月5日
さあ初日です。
お天気は快晴で風はすっかり秋、本当に気持ち良くて爽やかです。4月に来たときは初日に舞台が停電になったり、ハプニングがありましたが今日は何事もなく無事終了。
「将門」は金丸座の舞台の上ならではの大時代で古怪な雰囲気が濃厚。「巴御前」では途中から戸を全部締め切り(昔ボランティアの人がやっていた雨戸閉め)かなり暗くなったところにスッポンから播磨屋さんが登場すると、客席中割れんばかりのすごい拍手で、演奏している私たちの自分の音が聞こえなくなるほど!
舞台から客席を見ていると、皆ホントに楽しそうにお芝居を観ていらっしゃいます。
終わったら何だかぐったり疲れてしまったのですが、まだ明るいのでお山に登ってきました。4月は10回以上登ったのでだいぶ足が軽くなりましたが、半年ぶりの金毘羅参りはやっぱり大変でした。今回も運動不足解消に毎日お参りしようかな。
10月8日
昨日今日と琴平方面はお天気が悪く、三味線にとってはいやな状態ですが、このように天候が楽器におよぼす影響がはっきり現れるのも金丸座ならでは。空調のない昔は大変だったのでしょうね。
相変わらず金丸座は連日大賑わいです。今日は全日程の丁度真ん中の日なので一応「中日」。播磨屋さんからお寿司を頂戴したり、泊まっているホテルの女将さんが観劇に来て差し入れがあったり楽屋は賑やかでした。
新作の「巴御前」ですが回数を重ねるうちにだいぶ落ち着いてきました。しかしいまだ油断ならず、毎日必ず一回皆で復習います。長い曲なので軽く通しても40分くらいかかりますが、今回のように新しく覚えた曲はしつこいくらい毎日復習わないと安心できません。
楽屋での稽古の時に間違わないで弾ければそれは自信になりますから、舞台でも思い切り弾けるのですね。
この後の姫路城歌舞伎公演の「白鷺城異聞」も新曲ですが、今月は芝居以外の舞踊会の仕事でもあと3曲、新曲が出ます。
ホテルではテープを聞きながら譜面とにらめっこの毎日、まだまだ難行苦行の日が続きます。
10月10日
10月は、やおよろずの神々が出雲大社に集まりますから、よその土地には神様がいなくなってしまうので「神無月」。
これで思い出されるのが志ん生の噺のまくら。
神様が大勢出雲の国に集まって宴会になり、布袋様が酔っぱらって大黒様の頭巾を引っ張って喧嘩になり、打出の小槌を振り回している横で誰かが弁天様を口説いているとか、縁結びの糸を結んでいるうちに糸が3本余ったのでめんどくさいから3本まとめて結んだら三角関係になっちゃったとか・・・
その「神無月」ですが金毘羅の神様は例外で出雲に行かないとのこと。それでこちらでは「神在月」だそうですが、その神様が年に一度下界に降りてくるお祭りが10月10日、11日に行われる「金刀比羅宮例大祭」です。年に一度の大祭ですから今朝は早い時間から参拝の人が大勢参道を歩いていて、あちこちで奉納のお囃子の音が賑やか。お天気も良くお祭り日和になりました。
そのお祭りの見どころは今日の夜です。夜9時にお山の上の本宮を出発して、石段を練りながら行列が降りてくるそうです。とにかくすごい人出が予想されるので見られるかどうかわかりませんが10時過ぎに行ってみます。
慌ただしいうちに始まった秋のこんぴら歌舞伎も明日は千龝楽。お祭りを見に行かなきゃいけないし、ホテルの部屋の片づけもしなくちゃいけないし千龝楽イブは忙しいですね。
10月11日
昨晩ですが、テレビで映画「インデペンデンス・デイ」をやっていまして、これを見終わってからお祭りの行列を見に出掛けたところ「あれっ?」
商店街はガラーンとしていてお掃除をしています。何と11時過ぎにはもう終わっちゃったそうでこれがホントの「あとの祭り」残念でした。
今日は、神様が山に戻る行列が夜ありまして昼間はおいらん道中やいろいろな催しがあるとのこと。
さて千龝楽、いいお天気で暑くなりました。舞台の上も今日が一番暑かったです。楽だから何か特別なこと(どこかでこんぴら船ふねを弾くとか)があるかと思ったら、何もなくいつも通りに進み無事に全日程終了。「巴御前」が終わってアンコールの拍手が鳴りやまないので、こりゃもう一度幕を明けて播磨屋さんがご挨拶に出るのかと思って皆急いで舞台から降りましたが結局そのまま打ち出し。それもそのはず、幕が閉まってすぐ播磨屋さんは頭を外して衣装も脱ぎにかかっていたそうですからこれでは出られないですね。
荷物をかたずけて皆バスで高松空港へ。連休ということもあり飛行機は満席でとても混んでいました。
9時10分羽田着、はぁーくたびれた。
左より 鳥羽屋里長師、杵屋栄津三郎さん、私(栄十郎)
10月12日
今回のこんぴら歌舞伎、日程は短かったのですが内容がハードだったので、家に帰ってきたとたんガクッとくたびれてしまいました。
今日は一日何もなくお休みなのですが、インデックスのページにアップした「とろう会写真展」の搬入で午前中ギャラリーに行き写真を飾ってきました。この頃はパソコンやらデジタルカメラばかりいじっていて銀塩写真を撮っていなかったので出すものがだんだんなくなってきました。今回出展した写真は、二眼レフの「ローライフレックス3.5F」で撮ったものです。30年くらい前のカメラですが、とにかく素晴らしい色を出してくれる私のお気に入りカメラです。
写真のセットが終わって2時くらいまでギャラリーにいましたが、これから後のものの稽古や準備があるので今日は早い時間に帰ってきました。
10月14日
今日は昼間は舞踊会の下ざらい。夜は7時から「姫路城創作歌舞伎」の顔寄せ、続いて第一回目の稽古がありました。
播磨屋さんをはじめ、こんぴらに行っていたメンバーがまた全員集まった感じで、「白鷺城異聞」には竹本、筝曲も入るので稽古場の中はすごい人数です。
播磨屋さんの宮本武蔵、かっこいいですね。芝居の途中に巌流島の物語をするところがあるのですがよかったなぁ。
今日の稽古で少し全体の様子がわかりましたが、音楽は賑やかだし、お化けが沢山出てきたりこれが屋外ステージでどのようになるのか見当が付きませんが面白くなるのではないでしょうか。このあと18日まで東京で稽古をして20日の昼間、姫路乗り込み、夜には舞台稽古があります。
10月15日
今日は名古屋キャッスルホテルでの「勘九郎・勘太郎・七之助舞踊競演会」に行きました。
勘九郎さんのディナーショーなのですが、その最後に勘九郎さん、七之助さんが「連獅子」を素で踊られました。
終わるのが遅いので今晩は名古屋泊まり。明日は国立小劇場で催される藤間勘恵理さんの舞踊会の本番なので、早い時間の新幹線に乗りそのまま国立劇場へ行きます。
10月17日
昨日の舞踊会の本番もかなりハードだったので、朝起きても何だか身体がくたびれたまま。あー、しんどい。
今日は「とろう会写真展」の最終日です。3日間休んでしまったので、少し早めにお昼頃にギャラリーに行きました。
折から銀座は「大銀座祭り」。こちらも最終日で日曜日ということもあり銀座界隈は大変な人出でした。そのせいか通りすがりに表の看板を見てふらっと入って下さる方も結構いて、ギャラリーが賑やかになって良かったです。夕方にはインターネットの歌舞伎関係友達が来てくれまして、終了までの時間を楽しく過ごしました。
夕方5時、盛況のうちに無事終了。メンバーの方とまた顔を合わせるのは、来年のこの季節になります。もうこれで写真の在庫がなくなりそうなので、来年こそは何か新しいものを撮りに行かなきゃなりません。
この後、夜7時から藤間宗家のお稽古場で「白鷺城異聞」の稽古。
特報 「BEN'S CORNER」 播磨屋さんの目に留まる!
稽古の始まる前のことです。準備をしながら栄津三郎さんとおしゃべりをしているところに播磨屋さんが。
播磨屋さん
「栄津三郎さん、ホームページとか作っていらっしゃいますか?」
栄津三郎さん
「はぁ? いえいえ私は全然そういうのは。(私をさして)彼が作っていて旅の日記を書いたりしていますよ」
播磨屋さん
「あっ、そうですか!。この間のこんぴらのこととかを書いてあると娘が言っていたので。あぁ、あなただったんだ(笑)」
私「は、はぁ・・(緊張!)」
播磨屋さんがおっしゃるには、お嬢さんがインターネットでホームページを見ているうちに、「BEN'S CORNER」を発見されたとのこと。
「播磨屋さんファン」の私にとっては実に嬉しい出来事でありました。
10月20日
さあ姫路に乗り込みです。東京は朝からちょっと肌寒く、雨でしたが天気予報では関西は快晴、屋外ステージの夜公演ですからなるべく暖かい、いいお天気になってもらわないと。
9時45分東京出発。名古屋辺りからお天気は良くなり、姫路に着くといいお天気で暖かく、空気はさらっとしています。今はちょっと汗ばむような感じですが、これが夜になってどのくらい冷え込むのでしょうか?
今日の舞台稽古は本番と同じ6時からですが、4時からサウンドチェックがあるので会場に向かいます。姫路城の大手門をくぐると目の前にはものすごい大きさの鉄筋の特設ステージが!


姫路城の入場券売り場の左手にある「迎賓館」という建物が我々地方の楽屋になっています。
4時からサウンドチェック開始。今回、私たち地方の山台は、舞台の手前にオーケストラピット状のスペースがありまして、そこに長唄、囃子、竹本、筝曲、黒御簾がすべておさまります。
上の写真のような状態で、いつもは役者さんの背中を見て演奏していますが今回は舞台のかぶりつきで芝居見物をしているようでいい気分。やっぱり芝居は前から観るものです。楽器別、全体演奏、個々の楽器、大薩摩それぞれチェックを行い、1時間ほどで終了。姫路城の天守閣が夕日に映えてきれいでした。
日が落ちてもそれほど寒くなく6時からの「鷺娘」の舞台稽古には何も着込まずに普段通りの着物でいってみました。夜空に白い舞台のコントラストがなかなかいい雰囲気、雪は降らせられないので照明で効果を出します。
終わってから「このくらいの気温ならまあいいよね」なんて言っていたらスタッフの人が「いやいや、冷えるのはこれからですよ」
皆楽屋に戻ると、「こりゃ、大変だ!」ということで、背中にホカロンをはったり着物の下に多く着込んだりしているうちに「白鷺城異聞」の舞台稽古になりました。山台の毛氈に座るとじんわりと冷たく、さっきよりは確実に気温が下がっています。「白鷺城異聞」は1時間くらいのものなのですが、やはり座っているうちにだんだん寒くなってきて、最後の方では足は冷たいし手はかじかんでくるし、歯の根が合わないような寒さではないのですが用心しないと風邪を引きそうです。
明日も6時から舞台稽古がありますが、いいお天気で暖かくなりますように。

夕日を浴びる天守閣をバックに
10月22日
いよいよ「姫路城創作歌舞伎」一日目。
昨日の舞台稽古は、幸いあまり冷え込まず風もなくやりやすかったですが、今日もいいお天気で無風、昼間はちょっと暑いくらいでした。これが夜になっても変わらないと良いのですが。
午後4時会場入り。楽屋では皆それぞれに防寒対策を考えていますが中にはちょっと過剰に着すぎではないの、という人も。6時からの「鷺娘」はそれほど寒くないのですが7時からの「白鷺城異聞」ではかなり様子が変わります。昼間は少し湿気があって暑かったのが、夜になってカラッとしてしまったので思ったより気温が下がりました。
前にも書きました通り、私たちの山台は舞台のかぶりつきにありますので芝居を見上げる形になります。「鷺娘」は上演中ずっと演奏していますから、いつもとあまり変わりませんが「白鷺城異聞」は舞踊劇で竹本と掛け合いですからこちらが休むところがあります。休んでいると自然、目が舞台に行って何となく芝居に見入ってしまうのですね。普通の舞台では背中ばかりみているのがここでは舞台のかぶりつきにいて、目の前で播磨屋さんが動いているのですから見るなというのが無理というものです。
しかしあまり舞台に気が行っているときっかけを落とすことがありますので気をつけないといけないんですね。
途中から結構寒くなり手はカチカチだし、鼻はぐずぐずしてくるし風邪を引きそうな感じ。明日はもう少し何か着ないとだめかな。
8時頃終演でしたが、帰りがけのお客さんからも「寒かったね」という声が聞こえました。
着替えて外に出るとライトアップされた姫路城が夜空に映えて、なかなかいい景色でした。

10月23日
「うー、寒かった」
「姫路城創作歌舞伎」二日目、終わった直後の第一声です。
今日は日中曇り、時々薄日が差していてそんなに寒くなかったのですが朝から風が強く、譜面を飛ばされないようにゴム紐を用意したりしました。防寒対策も念のため長袖のシャツを買ってきましたが、用意しておいてよかったです。
夕方会場に入ると風はますます強く(あれは天守閣おろしとでもいうのか)同じ時間なのに気温も昨日までとは全然違います。いつも以上に防寒対策をして舞台に行きましたが、今日ばかりは決して着すぎと言うことはありませんでした。
風が強かったので雲はすっかりどこかに行ってしまい、夜空には見事なお月さまが煌々と光っていて雰囲気も満点。
お天気に恵まれて二日間の「姫路城創作歌舞伎」無事終了。NHKが収録していましたので、そのうち放送されることと思います。
あー、それにしても寒かったなぁ。
10月31日
「楽屋日記」1週間ご無沙汰してしまいました。
姫路から帰ってちょっと風邪っぽくなってしまい、28日までは何も予定がなかったので体休め。月末の飛騨高山の仕事の曲を復習ったりしながら過ごし、どうやら疲れも取れて29日から31日までは舞踊会の仕事で飛騨高山に行って来ました。朝晩は冷え込みましたが日中は爽やかな陽気で過ごしやすかったです。この仕事は長唄が15曲ありまして、下浚い、本番の二日合わせて30曲弾くことになりますから、かなりハードでした。
終演後、名古屋までは高山本線で約2時間、名古屋駅に着くと大変な混み方です。それもそのはず、ちょうどF1の鈴鹿グランプリが終わった後でほとんどがその帰りの人なのです。
いいなぁー、見に行きたいなぁ。
新幹線に乗ってからは「素襖落」の譜面とにらめっこ。高山の仕事と11月歌舞伎座の稽古が完全に重なってしまい、歌舞伎座の稽古は休んでしまったので明日の初日はいきなりぶっつけということになってしまいました。今までに何回かやっていますから少し弾けば思い出しますが、稽古に一度も出ていないというのは何だか心配なものです。幸い明日の昼間は時間がありますのでそこで稽古しなくちゃ。
それにしても今月は琴平、名古屋、姫路、高山といろんなところに行きました。