こんぴら歌舞伎編

金丸座

こんぴら歌舞伎のレポートをお送りします。

4月6日
 今日は供奴を除く舞台稽古が行われました。朝方は変わりやすい天気で急に嵐のように強い雨が降ったりしていましたが11時頃から晴れ始め爽やかな陽気になりました。自分の用事まで時間があったので、楽屋で三味線を立ててから金比羅さんへお参りに行きました。

参道

 6年ぶりの金毘羅詣ですが、山門に着くまでにもう息が上がって足は痛いし日頃の運動不足を痛感。しかし山門を出たところからの緩やかな参道は桜が満開で、風が一陣吹くと花吹雪がはらはらと舞う見事な景色でした。この参道を過ぎるとまた石段が続き、汗は流れてくるし、また息が上がってきて(心拍数は150を越えていたと思います。ジムで運動をしているときより数倍きつかった)もう目が回りそうでいやぁ苦しかった。最後の長い石段を登って本宮についてほっと一息。風が爽やかで気持ち良かったです。

提灯
桜

 金刀比羅宮の提灯の「金」の字ですがこれは「人」が「長く」、「平和」にという意味をこめて「人」「長」「平」を組み合わせて「金」の字に似せているそうです。
 体中を血の巡りが良くなったせいか帰りは足も軽く金丸座へ戻りました。それにしてもこの参道の桜は見事です。

 「豊志賀の死」の舞台稽古を見ていましたがこれは今回一番面白いかもしれません。だんだん照明が落ちて暗くなった金丸座の舞台での怪談噺、これはかなり怖いです。後は見てのお楽しみ。

今日の舞台稽古は考えていたよりずいぶん遅くまでかかり、長唄の用事の終わったのは午後8時をまわっていました。夜になって昼間の暖かさはどこへやら、急に寒くなり震えながらホテルへ戻りました。食事の後は温泉に入り、大浴場の入り口でやっていた足裏マッサージをして(これは本当に痛いですね)部屋に戻る。

それではまた明日(の予定?)

4月7日
 
昨夜の足裏マッサージが効いたのかよく眠ることが出来て、すきっとお目覚め。
朝食をすませてから運動がてら金比羅さんを登りに行きました。昨日行ったので体が慣れたのか足が軽くなりましたが、本宮に着くころにはやっぱり心臓がバクバクしてしまいます。
 結構汗をかいたのでホテルに戻ってからお風呂に。行ってみると大浴場には誰もいなくて私一人で貸し切り状態。春の日差しを浴びながら露天風呂にしばらく浸かっていましたが何ともいい気分。
(本当に何しに来たんだか?)

 今日は午後からこんぴら歌舞伎恒例のお練りです。
午後1時半から金刀比羅宮で成功祈願祭、2時半にお酒の「金陵」を出発してお練りが始まりました。約1時間で琴平の町を一周するのですが行列の進むところ黒山の人だかりでみんな大騒ぎ。

芝翫丈
宗十郎丈
弥十郎丈
橋之助丈
福助丈
皆さん楽しそうですね

 お練りが終わって5時半から「供奴」の舞台稽古がありましたが、日が落ちた後の金丸座というのは大変に冷え込みまして寒かったです。なにしろ建物は板一枚の壁で、奈落がありますから足からじんじん冷えてきます。衣装を着けた橋之助さんも「上半身は着込んでいて温かいんだけど足が寒いんですよ」とのこと。
寒い舞台稽古も6時半に終わり一同ホテルへ帰還。
明日はいよいよ初日です。

金丸座坂道

4月8日
 
さあ初日です。
気持ちのいい日差しの中を歩いて楽屋に着くと何か楽屋内が騒然としています。なんと昼の序幕の「中将姫」が明いてすぐ舞台と楽屋が停電になったとのこと。小屋の中は電気が消えたときはかなり暗くなりましたが、すぐ2階の雨戸を開けて光を入れて舞台はそのまま進みました。これが今のがっちりした劇場だったらもうにっちもさっちも行かなかったかもしれませんがそこは金丸座。電気が消えたことによって昔の芝居小屋はこうだったんだというのを見せてくれたようです。
 「豊志賀の死」を、昔ボランティアの人がやっていた戸をバタバタ閉めたり明けたりで明かりを調節してロウソクの面明かりで幽霊を見せたりしたら怖いし面白いでしょうね。「供奴」では足拍子の合方のところで、お客さんがみんな足に合わせて手拍子を打ったりして可笑しかったです。
 とまあ停電のほかは大きなアクシデントもなく15分遅れで一日無事終了。

☆これからこんぴら歌舞伎においでになる方へ
ここ2,3日琴平方面は気温が低めなので金丸座内は結構冷え込みます。少し暖かい格好で観劇されたほうがいいかもしれません。今日も舞台の上や黒御簾はは本当に冷えこんでいました。

4月11日
 
昨日から天候が不安定になり日が差したり、土砂降りの雨になったり楽器にとってはいやな感じです。金丸座は純粋な木造建築ですから晴れて乾燥しているときは本当に気持ち良く音が鳴るのですが、一度雨が降ると湿気で三味線の棹がさーっと曇り急に鳴らなくなってしまいます。普段から温度や湿度といったことには敏感になっていますが、鉄筋の劇場にいると空調が効いていますからそれほど変化はありません。しかしここに来るとの自然の空気の変わり方にはびっくりさせられます。
 今日は朝9時から子供歌舞伎がありました。子供歌舞伎というのは小学生中学生を対象に芝居を見せる催しで歌舞伎座でも月に1回行われています。今回は澤村宗丸さんが「供奴」を踊りました。
 朝9時というのは私たちの世界では結構早い時間で(会社勤めの方には怒られるかもしれません)特に唄の人にはしんどい時間です。
今朝も8時半に集合して声出しを兼ねて一度浚って、本番へ。場内は制服姿の小学生?、で一杯、大きな拍手で迎えられました。おそらく初めて芝居を観る子供がほとんどだと思うのですが、初めて見た歌舞伎が金丸座なんていうのはうらやましい経験ですね。

 午後になって天気も良くなり空気もからっとしてきました。これで三味線が元に戻るといいなぁ。

           のぼり          

4月12日
 
夜中、F1のブラジルグランプリを最後まで見てしまったので寝たのが明け方4時頃。さすがに朝いつものようには起きられずうとうとしていると、いきなりルームメイクのおばさんがドアを開けて入ってきてびっくり! これでようやく目が覚めました。
昨日の夕方、きれいに晴れたので今日はいい天気なのだろうと思ってカーテンをあけると曇り空。天気予報では午後から雨とのこと、また三味線がポコポコになるのでしょうか?

楽屋に行ってまたびっくり!

 残念なことに芝翫さんが風邪のため本日休演されました。早く良くなって面白くて怖い「豊志賀」を見せていただきたいです。本日の「豊志賀の死」は福助さんが代演。福助さんは「供奴」以外は出ずっぱりでこちらも大変ですね。

 天気予報通り夕方から雨が降り出し予想通り三味線は湿気ってポコポコになりました。これで天気が良くなって乾燥したときが三味線の皮にとってもっとも危険なときで、裂けることが多いです。裂けないことを祈りつつ三味線をよく拭いてしまって楽屋を後にしました。

4月13日
 
朝7時ころ目が覚めてしまい、天気も良かったので8時前にホテルを出てお山(金比羅さん)に登りに行くことに。これでここに来てから5回目の金毘羅詣、本当にいい運動になります。
午前中から風があったのですが昼前から大変な強風になり、テレビで「瀬戸大橋線のマリンライナーが強風のため運転を見合わせている」との臨時ニュース。

 残念なことに芝翫さんは本日も休演。「供奴」の頃から風はますます強くなり金丸座の障子はガタガタいいっぱなし。
夕方になって気温が下がり始め、風が強いから楽屋が急に寒くなってきました。黒御簾にいてもすきま風があちこちから入ってきて足が冷たく手もコチコチ。空模様まで怪しくなってきて、こんなんで雨に降られたのではかなわんと急ぎホテルへ帰りゆく(供奴の歌詞みたい)。
 結局瀬戸大橋線は風のため一日立ち往生してしまってだいぶ影響が出たそうです。お参りの人が何となく少なく見えたのもこれが原因かなあ。

4月14日
 
今日はいいお天気でした。久しぶりに三味線もシャリッとした音で気持ち良かったです。芝翫さんは本日も休演。
この町に来るとどうしてもうどんを食べることが多くなるのですが、町中にあるうどんやさんはまあどこも同じような感じです。
 7、8年前に「恐るべき讃岐うどん」という本が出まして、この本には町中にある有名どころは全然出ていなくて地元の人にしかわからないマニアックな店ばかり取り上げられています。
 そのなかに取り上げられた「宮武」という店があります。琴平の町からタクシーで1500円くらい。畑の真ん中にあるのですが、実に野趣あふれるうどんやさんでした。こちらの独特の食べ方に「生醤油うどん」というのがあります。ここではつめたいうどんに醤油をかけて生姜を好きなだけおろしてのっけていただくというものなのですが、いやあこれは美味かったです。
 セルフサービスでどんぶりにうどんを入れてもらって、野菜のてんぷらがずらりとならんだお盆から好きなものを取ってレジでお金を払いテーブルに行きます。そのテーブルのうえには生姜がカゴに盛ってあって横にはおろし金が置いてあり好きなだけ生姜を下ろして食べられるのです。「生姜食い」の私には嬉しいかぎりで一個丸々下ろしていただきましたが、口の中がきりきりとくるところに醤油の濃い味、そして大変に腰のあるうどん、本当に美味しかったです。
今回はまだ行っていませんが時間の都合がついたら行ってみようと思っています。皆さんも是非どうぞ。

4月15日
 
本日も朝からいいお天気で外を歩いていると汗ばむほどでした。
私たちの楽屋は金丸座に隣接している琴平町児童館というところを使っているのですが、この建物は東と西の窓があって日当たりがすこぶる良い所なのです。特に午後になると西日に晒されるため窓際にかけてある着物がほかーっと暖かくなっていて、干した布団のようにお日さまのにおいがするのですね。おかげで今月は着物も襦袢もさらさらしていて気持ちいいです。
 病気休演中だった芝翫さんは今日から復帰されました。口上の後の花道での宗十郎さんとのトークショー?にも出演、お元気そうで何よりでした。
今月私の仕事は花道トークショーのお二人の引っ込みの「金毘羅舟ふね」を弾いて五時に終わるのですが、今日は終わってからお山に登りました。これで六回目ですが相変わらず体が慣れることはなく心拍数は150くらい、ひゃー苦しい苦しい。でも足はだいぶこなれてきたようで前ほど痛くなりません。五時過ぎると参拝の人も減り暗くなってきますのでちょっと寂しくなってきます。
 
 金比羅さんを夜に登ったら怖いだろうね、なんて楽屋で話していたのですが、何と!毎日夜の10時過ぎに懐中電灯をもって一人で本宮の上の奥社まで行っている人がいるとのこと。奥社というのは本宮の右手を20分ほど行ったところにあるのですが、ここから先は木が鬱蒼としていて山道のようになり所々に苔むした祠があって昼でも薄暗い所です。ここを夜一人で歩くなんて考えただけでもびびりますが、夜食事の時にその御本人と一緒になりまして話を聞きました。
平気な顔をして「往復約1時間あれば帰ってこられます、今日もこれから行ってきます」と言っていましたが一体どういう人なんでしょうか?。
 話を聞きながら私も、これを実行したらこんぴら歌舞伎日記のいいネタになるな、なんて一瞬思ったのですがまあまず無理でしょう。
一人じゃいやだけど長唄全員で提灯を提げて一度行ってみるか、という話が盛り上がっていましたのでそのうち大人数では行くかもしれません。その時はまた報告します。
 
 早いもので明日はもう中日です。

4月16日
 
今日も朝からいいお天気で、半袖でちょうどいい陽気になりました。爽やかで気持ちが良いので楽屋にはいる前にお山に登ることにしました。昨日登っているので結構軽く登れましたが日差しが強くて暑いこと暑いこと。汗びっしょりかいて楽屋に戻ってきましたが体が熱いのでシャツ一丁になってしばし放熱。30分ほどしてようやく汗が引き着替えることが出来ました。
 今日は中日なので大道具さんや楽屋係さんに御祝儀を渡しに金丸座を歩き回り、まあ毎月やっていることなのですが中日というのは忙しいです。本日は春らしい爽やかな1日でしたがまた明日から天気が悪くなるとのこと。

4月17日
 
こんぴら歌舞伎というのは旅に来ているとはいっても一ヶ所に居続ける京都や大阪と同じ感覚なのでだんだん変化がなくなってきます。そこにいくと巡業は毎日場所が変わり違う劇場、違うホテル、本当に書くことに事欠きません。
 どうもこの三日間くらいの「こんぴら歌舞伎日記」は小学校の頃の「お天気日記」のように今日は晴れました、雨でしたなんていうことばかり書いていますね。で今日はどうなのかというと、変わったこともないのでまたお天気のことになります。昼間は薄日が差していいお天気だったのに3時くらいから曇ってきて、雨は降ってこないのですが気温が下がり始め舞台稽古の頃のように肌寒くなりました。風邪を引かないように気をつけよう。

4月18日
 
今日は朝から雨です。それもかなり強い雨で、風も強く気温も低いという憂うつな天候。そんな憂うつな日でしたが嬉しかったことが一つ、このホームページを見て下さった方が楽屋を訪ねて下さいました。インターネットの情報の早さというのは十分承知していますが、自分のホームページがこうして多くの方の目に触れているのかと思うと嬉しいようなこわいような、期待を裏切らないように頑張らなくてはいけませんね。
 二部の「ちょいのせ」の幕が明いてありゃりゃ!。金丸座の入り口辺りが皆開いていてお客さんがぞろぞろ花道を歩いたりしてまだ席に着けない状態。たぶん一部と二部の入れ替えの頃雨が強かったので入れ替えがぜんぜん間に合わなかったのです。
 以前はもっと一部、二部の間に時間があって、お茶子さんの短距離走(普段お茶子さんが席を案内をするのに歩く、客席の升を区切っている細い板の上を走る)や、いかに美しくその板の上を歩くかというファッションショー?をやったりしていました。偶然客席をふらふらしていた私が審査をやらされて賞状授与をしたり、とにかくいろんな面白い事をやっていました。どうも今回は芝居の時間がたっぷりでお客さんの入れ替えが精いっぱいのようです。

4月19日
 
昨日に引き続きまた雨です。
楽屋で三味線を出すと棹の勘所の所が湿気を帯びて曇っています。毎日よく拭いてしまうのですが指の当たるところには油っ気がしみ込んでいてそれが湿気を呼ぶようです。皮の表面もぺたっとしていて、撥も皮に当たるときしんでいる感じ。楽器を拭く布も湿気っているようでその布でいくら棹を拭いてもいっこうに滑るようにはならず、今日はここに来てから一番湿度が高い三味線にとっては最悪の日かもしれません。
 二部の入れ替えはやはり間に合わず幕が明いて暫くざわざわしていました。5時頃には雨も上がりましたが暗くどんよりしていて参拝の人もまばら、お土産屋さんも早仕舞していました。

4月20日
 
今日は快晴です。天気予報では25度くらいになるとのこと。今日明日とNHKの録画があるので舞台のあちこちにマイクやら機材が置いてあります。収録するのは第二部の「ちょいのせ」と「かさね」です。
 「ちょいのせ」で宗十郎さんが台詞の途中に「〜この清兵衛の男が立たぬということはない。立たぬときにはバイアグラ」というのを毎日やっています。これは東京でのお稽古の時、宗十郎さんがいきなりおっしゃって共演者の皆さんがひっくり返ってしまい(稽古中しばらく笑いが止まらなかった)初日が明いてからもお客さんを笑わせていた決め台詞なのですが、NHKの舞台中継でこれ言っちゃうのかなと思っていたらきっちりおっしゃっていました。今日はテストですがテストとは言ってもちゃんと録画していますし、明日の本番ではどうなるのでしょうか。(ちょっと期待!)
二日間雨でお山に登っていなかったので、終わってから一汗かきに行ってきました。

山門からの参道

4月21日
 
前に言っていた金刀比羅宮夜間詣ですが、どうせ暗いうちに行くのなら日の上がる前に登って本宮で日の出を拝もうではないかということになり五七郎さんと朝4時50分頃、まだ暗い中を出発。
 さすがに商店街はまだどこも開いていませんが石段にかかると前に2、3人登っている人がいます。気温も思っていたより暖かく歩いているうちに汗が流れてきます。ホテルを出たときは真っ暗だったのにだんだん東の空が明るくなってきました。山門に着くと大きな提灯に明かりが入っていて、そこから続くなだらかな参道の左側に下がっている提灯や石燈篭にも明かりが入っていてなかなかいい雰囲気です。これは桜が満開の頃来たらいい夜桜見物が出来たことと思います、惜しかった!。途中も所々石燈篭に電気がついていて足元を心配することなく5時15分本宮に到着。

 東の空はどんどん明るくなってくるのですがちょっと雲が多かったので残念ながらご来光は拝めませんでした。しかしうっすら霧のかかった讃岐富士、盆地の静かな景色は気持ちのいいもので、起きるのは大変でしたが来てよかったです。
 5時50分頃本宮を後にして石段を降り始めましたがこのくらいになると参拝の人がだいぶ増えてきまして、なかにはこれで毎日体を鍛えているのか走って登ってくる人もいます。しばらく後ろ姿を見ていたのですが休むことなくそのまま走り続けて見えなくなってしまいました。
 曇り空だったのが次第に雲が切れて日が射し始め今日もいいお天気になりそうです。6時半ホテルに戻り朝風呂でさっぱりして落ち着いてしまったらその後の眠いこと眠いこと。どうにもしょうがないので一眠りしてお昼頃ホテルを出て金丸座へ。
 「供奴」が終わったころ案の定大変な睡魔が襲ってきましたが顔を洗ったり眠気覚ましのドリンクを飲んでNHK本番の「ちょいのせ」に備えます。例の「立たぬときにはバイアグラ」宗十郎さん本番でもきっちりおっしゃっていました。
 この芝居、見るのも仕事でやるのも初めてなのですが宗十郎さんの仁に合っていて本当に面白いですね。先月日生劇場で「お染の七役」をやっていましたから続きをやっているみたいな感じで(福助さんも連続でお染ですね)こういう同じ登場人物の芝居が続くのは珍しいです。続いているといえば「供奴」も2ヶ月連続ですがこちらは染五郎さんと橋之助さんで全然違う踊りなので新鮮です。「ちょいのせ」のこちらの用事が終わって帰り道、頭取部屋で収録中のモニターを見ていたのですが、宗十郎さんとてもいいお顔していらっしゃいました。

4月23日
 
こんぴら歌舞伎も残すところあと3日、楽屋でも帰り支度が始まり慌ただしくなってきました。私も使わないものから片づけ始めてホテルの部屋がだいぶさっぱりしました。
 毎月千秋楽近くになると次の月の出し物を稽古したりして忙しくなるのですが来月は私の所属している社中は仕事がなくお休みなので(まるっきり一ヶ月休みなのです)皆のんびりした感じ。
 仲間の人が朝、タケノコ掘りに行きまして楽屋には30センチくらいの立派なタケノコが山積みになっていました。このくらいのタケノコがこちらでは一本200円くらいで買えるそうで本当に安いです。先の方を薄く切ってお刺し身で食べるタケノコって美味しいんですよね。
今日は朝から風が強かったのですが、夕方になって気温が下がり始めすっかり肌寒くなってしまいました。客席は寒かったのではないでしょうか。
 今回のこんぴら歌舞伎は仕事が楽で温泉入り放題というまあのんきな状況なのですが旅もこのくらいの時期になると結構疲れてくるもので風邪を引きかけている人やホテルの部屋で眠れないとかいろいろな症状が出てきています。幸い私は風邪も引かずここまで来ましたが、あと3日頑張ろう。

「供奴」の開演前

4月24日
 
さああと二日、楽屋に行くと、ん?皆美味しそうなものを食べています。何かと思ったら児童館の方が昨日のタケノコでタケノコご飯と煮物を作って下さったとのこと。私も夕方おなかが空いたので定食(ご飯、煮物、お吸い物、コロッケ)で頂いたのですが美味しかったです。
 今月このHPを見て下さった方から沢山メールを頂きましたが、今日は今回お茶子さんをやっていた方お二人が楽屋を訪ねて下さいました。ちょっと舞台裏を御案内したのですが、お茶子さんで金丸座にいても楽屋への立ち入りは御法度だそうでお二人とも公演中の楽屋へ入るのは初めて、いきなり善六の顔の宗十郎さんに鉢合わせしたりして可笑しかったですね。役者さんの楽屋にいきなり行くというのはまず不可能ですし、実行するにはかなり心臓が強くないとだめですが、長唄の楽屋へはお気軽においで下さい。(行ってもしょうがないか?)
 
 旅にノートパソコンを持って歩くようになってから手荷物が一つ増えたので行き帰りにいかに荷物を減らすか、今回も考えているわけですが、ホテルの残りの荷物をどのようにかばんに詰めるかがパズルの様相を呈してきました。一応収まりそうなのですが、これは明日出発まぎわまで油断できません。収まったと思ったら何か忘れ物がぽこっと出てきたりするんですね、これが。

4月25日 千龝楽
 
さて千龝楽です。前日にすっかり荷物を下ろしてしまったので部屋はすっからかん、何もすることがないので早めにホテルを出て楽屋へ向かいました。
 今朝金丸座では千龝楽恒例のお餅つきがあってつきたてのお餅が皆に配られました(夕方焼いて食べたのですが美味しかった)。
 今回は千龝楽と行っても特別変わったことをすることはないのでいつも通りの進行。以前第九回の時ですが勘九郎さんが「高坏」をやったときの千龝楽の盛り上がり方はすごかったです。
 「高坏」は普段は舞台で追いかけっこで幕となるのですが、この日の幕切れはあるきっかけから「金毘羅舟ふね」を演奏、勘九郎さんが「金毘羅舟ふね」を踊りながら花道を引っ込みました。よーく見ると揚幕の中で地元の方が後ろ向きで踊っていて勘九郎さんはその振りを見ながら正統の「金毘羅舟ふね」を踊っていたのですね。「割れんばかりの拍手」という言葉がありますがあんな大きな拍手と歓声は今までに聞いたことがありませんでした。お客さんの興奮があんなに伝わってくるというのはこんぴら歌舞伎、金丸座ならではのもので、私も弾きながらじーんと熱くなりました。
 午後5時口上の引っ込みを弾き終わってこんぴら歌舞伎全仕事終了。後片づけをして6時半に空港行きのバス出発、今日帰るのは長唄、囃子、竹本約30名であと大勢は26日帰京。空港に着くと宗十郎さんと弥十郎さんもいらっしゃいました。7時55分発の最終の東京行きで高松空港出発、9時半に羽田着、解散と相成りました。
「こんぴら歌舞伎日記」まずはこれぎり。


楽屋日記・1999年4.5.6月

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